『家族喰い 尼崎連続変死事件の真相』感想 胸糞悪い…… #尼崎連続変死事件

また胸糞悪い事件のノンフィクションを読みました。

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まさに未曾有の怪事件。発覚当時63歳の女を中心に、結婚や養子縁組によって複数の家庭に張り巡らされた、虐待し搾取する者とされる者が交錯する人間関係。その中で確認された死者11人。この複雑きわまる尼崎事件の全容を執念の取材で描いた、事件ノンフィクションの金字塔。文庫化にあたり70ページ大幅増補。

実際に起った事件を追った記者のノンフィクション。
この手のものでは以前も取扱った「北九州」もかなりのアレな事件でしたが、これも相当にアレ。
読んでいて気持ちのいいものではないけど、引き込まれます。

ただ、事件に関係する人間があまりに多く、読んでいてちょくちょく自分が誰についての記述を読んでいるのか分からなくなる。そういう意味では北九州とか北関東とかのほうが面白いかも。ま、事件に面白いもクソもないというか、本当にクソなんですが。

何故そんな読まないほうがいいようなモノを読むのかというと、結局人間というものへの興味なんでしょう。暴力等による人間の支配というものが現実に起こった状況をつぶさに感じ、何かしら思うところがないか、探したいというスケベ心。

今回の事件、大雑把に言えば北九州のそれと基本的には同じ印象でした。ただ角田のオバハンの小物っぷりが際立って、それはそれで怖かった。松永はもちろん怖いが、このオバハンも相当に怖い。むしろ小物な分、怖さが顕著。

位置: 1,234
九八年三月の小春さんの葬儀をきっかけに猪俣家に入り込んだ美代子は、同年六月には一郎さんが滋賀県彦根市に持っていた家を売らせ、その売却代金を自分のものにした。同時期には二郎さんが持っていた神戸市の三宮駅近くにあるマンションも、自分名義に書き換えている。  さらに光江さんと四人の息子夫婦、その子供たちを西宮市の高層団地に同居させ、働きに出して給料を搾取していたこと。また、ときには窃盗を強要し、団地の室内は盗品倉庫のようになっていたということも話した。

位置: 1,241
「彼らはそれぞれ勤め先を辞めさせられ、その退職金を搾取されました。また、生命保険も解約させられ、解約で得たカネも奪われています。なんで男たちが集団でいるのに、そういう支配が可能だったのか、私は不思議でした。しかし、取材を続けていくと、美代子が自分と暴力団とのつながりを示唆しながら、男たちを脅していたことがわかったのです。  また、美代子は親族たちに毎晩話し合いを続けさせ、日替わりでそのうちのひとりに難癖をつけて責め立てていました。その場でみずからは手を出さずに、『あんたらは私がこんなに腹を立てとんのに、なんもせんつもりか?』などと周囲を挑発して、集団で暴行を加えさせていました。そうやって、〝もし歯向かったら、次は自分がターゲットになるかもしれない〟という恐怖心を植えつけていったのです。脅しと暴力の日々のなかで、九九年には光江さんが死亡しました。そして、一郎さんの長男である康弘さんが団地から飛び降りて自殺しました」

暴力団の威を借る狐、なわけですな。
何より暴力は怖い、確かにそうだ。このオバハンは小物であるが、だからこそ臆病な人間の心理をよく分かっている。暴力に対して過敏になった人間の対応法をよく知っている。だから、男が集団でいたとしても支配できる。そういうこった。クソですな。

位置: 3,059
こんな話がある。〇四年頃、美代子はパチンコ店で知り合った若いカップルを一週間ほど自宅に軟禁し、その女性の家族に〝落とし前〟を要求したことがあった。しかし、その女性の姉妹の知り合いに現役の暴力団員がいて、逆に脅されたのだ。その際に美代子は「××様のご身内の方とは知りませんでしたので、本当に 粗相 な対応、どうかお許しください。知らなかったでは済まないことも充分承知しております。なんとか今回だけはお許しください」と平身低頭して謝罪を続けたという。  自分よりも強い者には徹底的に弱く、弱い者には徹底的に強い。それが美代子だった。自分を強く見せるためには手段を選ばず、虎の威を借りることが必要であれば、迷わず借りた。
そうして、美代子は虚勢が通用する相手しか、毒牙にかけてこなかったのである。

読めば読むほどクソ野郎。松永のような悪魔的サイコパス野郎とは違う意味での怖さ。勝てる相手としか試合をせず徹底的に勝つ、という、いわば生存戦略として間違ってはいないのだろうけど、それを平成の御代で行うというクソっぷり。

位置: 4,293
二〇一一年秋。複数の家族が数年にわたって監禁、虐待され、死者・行方不明者は十人以上という、犯罪史上例を見ないグロテスクな「尼崎連続変死事件」に日本中が震撼した。

色々読んだけど、頭に残ったのはこのオバハンのクソっぷりと記者の熱烈な事件への熱意のみ。ノンフィクション書くのって、本当に大変。

本著は記者の一人称視点で書かれているため、結構自画自賛的に思える箇所も多く、好き嫌いは分かれるでしょうね。北関東の本に近いかしら。ただひたすら胸糞わるい事件でした。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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