『悲しみのイレーヌ』 妻が妊娠中に読むというプレイ

身重な妻を持つ状況で読むに最適すぎて震える。

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『アレックス』で世界中に旋風を巻き起こしたルメートル氏。
その「ヴェルーヴェン」シリーズ第一作目がこちら。

とにかく登場人物のコンプレックスが凄い。
卑屈に、ただひたすらに卑屈に、コンプレックスと付き合っているのです。
チビ、ケチ、借金まみれ、性欲まみれ、金持ち……。

そういった描写が登場人物をよりリアルに、親しみやすくさせています。
あたくしのようにコンプレックス多めな人間には特にね。

あたくしが好きなのはカミーユ、そしてルイ。
ルイのコンプレックスは”金持ち”と”ブルジョア”。これもちゃんとしたコンプレックスで、ルイはそれを控えめにもしっかり十字架だと思って背負っているのです。

これが三十年前だったら、ルイは左翼の革命家になっていたかもしれないとカミーユは思う。だが今日ではイデオロギーなど人生の選択肢になりえない。またルイは宗教的感情を嫌っているので、その延長である奉仕活動に満足することもない。だから自分にできる〝つらい仕事〟を探すしかなかった。
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これで、ルイがこち亀の中川とぜんぜん違って、急に親しみやすく思えたり。
もちろん、カミーユは最高ですよ。うちらにとっちゃ、カミーユといえばビダンですが、これからはヴェルーヴェンと言わざるをえないかしら。

アルマンにとってそれがなんの捜査かは重要ではない。対象がなんであろうがかまわない。細かい情報をかき集めたいという欲求があまりにも強くて、それがすべてに勝るからだ。そしてその執着心が一度ならず奇跡を起こしてきたので、アルマンを毛嫌いしている同僚たちでさえ、この男はなにかをもっていると認めざるをえない。つまり、しつこくねだって小物を巻き上げるのが得意のこの哀れな男は、実はほかの刑事たちにはない〝無限の忍耐〟のようなものを身につけていて、それが最大限に発揮されると、彼のやり方もまた一種の才能だということが示されるのだと。
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アルマンもいいよね。居るよね。こういう人。
実際、付き合ってみると鬱陶しかったりして苦手だったりしますが。刑事は天職かもね。

本好きのための殺人劇

そして、今作の殺人のテーマは名著。
ネタバレにもなりますが、名著がテーマなんですよ。本好きによる本好きのためのミステリ。血肉沸き起こる展開にページをめくる手が止まらないっ。

エルロイの初期の作品はどこか懐かしい香りがした。私立探偵は薄汚い事務所で腐っていて、未払い請求書の山ができた机の前でコーヒーをすすり、ドーナツにかぶりつく。殺し屋たちは藪から棒にその異常性を解き放つ。だが作品のスタイルは次第に変化し、より奔放に、むき出しになり、生々しい残虐性を帯びていった。そこに描かれたスラム街は絶望を知った人類の象徴のようだし、愛でさえ大都会の悲劇的な色合いを帯びている。サディズム、暴力、残虐行為、幻想の澱といった要素が形をとり、そこに不正、復讐、殴り倒された女、血まみれの殺人といった物語が重なっていく。
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あっという間に読んじゃった。

カミーユを抱きしめたい

きっと読んだら、みんなそう思います。
カミーユ。カミーユ。あぁ、カミーユ……!!

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