『作家小説』 奇怪だが迫力不足

短編だからかしら、戦慄するようなものが無く。

ベストセラーを生産するための機械にとりつかれた作家。締切二日前に一行も書けず、くだらないアイデアばかりが浮かんで悶絶する作家。出身地のサイン会で、次々とおかしな客に見舞われる作家。この他、笑う作家、怒る作家、壊れる作家などなど、ミステリよりミステリアスな「作家」という職業の謎に果敢に挑む、作家だらけの連作小説集。

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何かしら「作家」が登場する短編集。
テイストはどちらかというと奇怪でホラー寄り。世に満ちている理不尽や不条理と、作家の奇怪性が組み合わさっています。

が、それ以上ではない。

面白い掛け算ではありましたが、筋としては単調なものが多かったですな。
短編だからかもしれませんが、「不条理」に筋が委ねられすぎていて、読んでいても「なんで?」というホワイダニットが未解消で、気持ちよくない。

あえていうなら『奇骨先生』が面白かったかしら。

「君たちが生まれる前から、大人はぼやいていたよ。読書離れが進んでいる、このままでは日本の将来が危うい、と。しかし、本なんてものは、いつの時代も読む人間は叩かれても読む。読まない人間は蹴られても読まない」
at location 1297

「君たちは若い。私などから見れば、まだお尻に卵の殻をつけてよちよちと歩いている雛のようだ。いや、これは馬鹿にして言っているのではなく、この年齢の人間の実感だよ。そんな若い君たちが夢を抱いてそれに進んでいくのは、基本的にはいいことだ。人生はたった一度しかないのだから、好きなことを存分にやりなさい、と慫慂したい。だがしかし、この人生の一回性には別の受け止め方もある。人生はたった一度しかない。だから、失敗すると悲惨なのだ」at location 1440

平易な文章で、読みやすいんですけどね。

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