短編だからかしら、戦慄するようなものが無く。
ベストセラーを生産するための機械にとりつかれた作家。締切二日前に一行も書けず、くだらないアイデアばかりが浮かんで悶絶する作家。出身地のサイン会で、次々とおかしな客に見舞われる作家。この他、笑う作家、怒る作家、壊れる作家などなど、ミステリよりミステリアスな「作家」という職業の謎に果敢に挑む、作家だらけの連作小説集。
[amazonjs asin=”B00LUC1MNQ” locale=”JP” title=”作家小説”]
何かしら「作家」が登場する短編集。
テイストはどちらかというと奇怪でホラー寄り。世に満ちている理不尽や不条理と、作家の奇怪性が組み合わさっています。
が、それ以上ではない。
面白い掛け算ではありましたが、筋としては単調なものが多かったですな。
短編だからかもしれませんが、「不条理」に筋が委ねられすぎていて、読んでいても「なんで?」というホワイダニットが未解消で、気持ちよくない。
あえていうなら『奇骨先生』が面白かったかしら。
「君たちが生まれる前から、大人はぼやいていたよ。読書離れが進んでいる、このままでは日本の将来が危うい、と。しかし、本なんてものは、いつの時代も読む人間は叩かれても読む。読まない人間は蹴られても読まない」
at location 1297「君たちは若い。私などから見れば、まだお尻に卵の殻をつけてよちよちと歩いている雛のようだ。いや、これは馬鹿にして言っているのではなく、この年齢の人間の実感だよ。そんな若い君たちが夢を抱いてそれに進んでいくのは、基本的にはいいことだ。人生はたった一度しかないのだから、好きなことを存分にやりなさい、と慫慂したい。だがしかし、この人生の一回性には別の受け止め方もある。人生はたった一度しかない。だから、失敗すると悲惨なのだ」at location 1440
平易な文章で、読みやすいんですけどね。
最新記事 by 写楽斎ジョニー (全て見る)
- スチュアート・ハグマン監督映画『いちご白書』感想 - 2024年10月10日
- トム・シャドヤック監督映画『パッチ・アダムス』感想 ロビン・ウィリアムスのお涙頂戴! - 2024年10月8日
- ガルシア・マルケス著『百年の孤独』感想 10年ぶり2度目。しかし不思議な話だ - 2024年10月6日