『カササギ殺人事件 上』感想2 テレビ的な面白さ

そこかしこにジェットコースター的要素が埋まっていてニクいんですよね

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チャブ警部補はパイ屋敷に戻り、いまごろはもっとも近い大都市であるブリストルから呼びよせた、ふたりの警察潜水夫を迎えていることだろう。湖底の捜索は、まさにきょう行われる予定になっているが、そこから何が発見されるか、ピュントにはすでに予測がついていた。

探偵はすべてをすでに見抜いている、という格好良さ。
あたくしもこんなこと言ってみたい。だいたい予想がつきます、ってね。

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三〇年代の終わりころでしたよ。おれは志願予備飛行隊の機体の通常整備をやってて、訓練を受けに集まってきた大勢の若い操縦士たちと顔を合わせてたもんです。あそこにいると、やがて戦争になるってことはひしひしと感じましたよ。サクスビー・オン・エイヴォンは、そんなことを忘れて暮らしてられる場所ですからね。女房は村のあちこちで、いろんな雑用をこなして手間賃をもらってました。考えてみると、おれたちはもう、あのころから別の道を歩きはじめてたんでしょうね。だから、あんなことになったとき、女房はおれを責めたし――たぶん、あいつの言うとおりなんだろう

刑事フォイルの舞台も戦中でしたね。
あのへんの空気感が妙にマッチするんだ。日本だって戦中って言われるとちょっと身構えちゃうもんね。いま、随分と昔のことになったいまだからこそ、舞台に使えるってやつだ。

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女房はわかってなかったんですよ、どこのトイレを掃除しようと、トイレ掃除にゃ変わらないってことがね。

いい言葉だ。どこのトイレを掃除しようとトイレ掃除にゃ変わらないってね。どこでバイトしようがバイトはバイトってことだ。良かれ悪かれ。

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おれはもう、あいつらの父親じゃなくなってた。あそこへ引っ越したその日から、気がつくとおれは脇に押しやられてたんですよ。マグナス、マグナスって……おれ以外、全員がそればっかりでね。息子たちが学校で成績表をもらってきても、おれの意見なんか誰も気にしない。それどころか、どうすると思います? 女房は息子たちを屋敷に連れていって、成績表をあの男に見せるんですよ。まるで、父親のおれより、あの男の意見のほうが大切だといわんばかりに。

悲しいな、男のプライドが。

このあたりで、あたくしは犯人はこの男なんじゃないかと思いましたね。
一番悲しくて感情移入したくなるような人物が犯人、というのはフォイルのときもよくありました。トリックの解き方としては褒められたもんじゃないですが、多分そうだろうと。

外れるんですけどね。

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家から離れた生活で、うちがどんな様子かはわからなかったし、週末たまに帰っても、おれはすっかりよそものあつかいでね。メアリはもう、すっかり変わっちまってました。おれが帰っても、喜んでもくれない。どうも、変によそよそしくて……まるで、何かを隠してるようにね。シェパード農場で出会って、結婚して、ずっといっしょに暮らしてきた娘がこんなふうになっちまうなんて、とうてい信じられないくらいでした。

女ってのはそういうところ、あるんだよ。
あたくしも随分と味わいました。あの可愛かった妻が、どうしてこんなことになるのかってね。ほんと、時の流れというのは怖い。

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しかも、その黄鉄鉱を、あの馬鹿はいったいどこに置いたと思います? 湖の水辺ぎりぎりに生えてたガマの草むらですよ。あの男が、息子たちを水辺に引きよせたんだ。十四歳と十二歳の子をね。ここへおいでと標識を立てたも同然のことをして、子どもたちをあそこへ行かせたんです。

果たして、マグナスはどういう意図でそこに置いたのか。単なるエンタメ精神でそうしたんでしたっけね。

そして怒涛の下巻へ。

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