『晩夏に捧ぐ 成風堂書店事件メモ』感想 番外編もまた善き哉

結構このシリーズ好きで、ハマってます。

駅ビルの書店で働く杏子のもとに、かつての同僚・美保から一通の手紙が届いた。手紙には、彼女の務める地元の老舗書店に幽霊が出るようになり、店が存亡の危機だということが書かれていた。ついては名探偵のアルバイト店員を連れて助けに来い、というのだ。気が進まぬながらも多絵を連れて、信州へ赴いた杏子だったが、そこで彼女たちを待ち構えていたのは、二十七年前に弟子の手によって殺されたという、老大作家の謎だった……!元書店員ならではの鋭くもあたたかい目線で描かれた、本格書店ミステリ。人気シリーズ番外編。

書店員とか出版社の営業とか、就職時にはまるで考えなかったけど、そういう人生もありだったのかもしれないなーと漠然と思ったり。本はいろんな可能性について考えられるから好きよ。

位置: 438
自動ドアをくぐり店の中に入ると、想像していたよりずっと通路が広く、天井もふつうの路面店より高いようだ。そのせいか、壁一面の書棚も、天井から下がるプレートも、思い思いの姿勢で本をめくる立ち読み客も気にならない。

本屋の描写がリアルなのよね。きっとモデルがあるんだろうな。
本が好きだが本屋も好き!という信念を感じます。

あたくしのように電子書籍でばっかり読んでるのは、それなりに「なんだかなあ」なんだろうな。

位置: 464
「本屋ってさ、奇抜じゃなくていいのよ。いつも寄るいつもの本屋さんは、居心地のいいのが一番」
「でもって、寄るたびに新しい発見もほしい、でしょ。杏子さんは欲張りなんだから」
「私が、じゃないわよ。お客さんってのはもともとわがままで欲張りなのよ」
まるう堂の店内にはこれといった派手な演出はなかった。けれど、初めて訪れた杏子たちでもすぐになじんでしまうような和やかさがあった。模様のすり減った足元の床も、使いこまれた 什器 も、いささかくたびれた壁面も、すっかり角が丸くなった柱も、一歩まちがえればみすぼらしくなってしまうのだが不思議と心地良い落ち着きを作り出していた。

あたくしにとっては、酒とかファミレスに、同じようなことを思ってますね。

位置: 794
「へえ、何を弾くのかと思ったらビートルズだ」
曲が流れてすぐに、朋彦が言った。杏子も知っている有名な曲だ。 『Yesterday』
かつて日本に一大ブームを巻き起こした歌。流行ったのは、昭和何年頃のことだろうか。

何か重要なキーになるかと思ってハイライトしたのですが、なんにもならなかったな。チェーホフの銃だ。

位置: 3,378
書棚の間で、杏子たちは一瞬、目を閉じた。 「彼の歯車はそこから狂いだした」
女性とできなかったのはそのせいか。
寝室に忍びこんだ女性をやみくもに殴ったのも。
秋郎はこの町に来る前から、容易にはふりほどくことのできない濃い闇に囚われていた。

物語の重要なパートをハイライトしてしまいました。これは備忘録的な。
しかし今回の謎解きはあんまり膝を打つものではなかった。面白かったけどね。

位置: 3,425
「まるうの社長さんが言いましたよね。彼はこの町に来なければよかったと。私は、彼が東京を離れたのも、この町でないよその土地に行くのも、全部『逃げ』だと思いました。逃げてばかりで結局は自滅したのだと。でも……」
「でも?」
「途中から思ったんです。逃げているうちに、ひょっとしたら少しずつでも強くなれたかもしれないって。私は嘉多山先生が、彼の心の箱を無理やりこじ開けたがったように感じたんです。それはやっぱり、きつすぎたと思う。いつか時間が経てば、彼が自分で蓋をずらす日があったかもしれない。

成長するのはいつだって本人ってこと。タイミングも本人次第。他人がとやかく出来ることの限度を、わきまえながら生きていきたいね。まさにそのとおりだわ。

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