『太陽と乙女』感想③ 学生時代にすべきこと

もがいている森見さんがとても愛おしい。

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小説家にもなれない、大学にも戻りたくない、就職したくもない、何にもなりたくない、それなのに何かにならねばならない。四畳半に籠もって深夜に天井を眺めていると、そのまま「ぎゃあ!」と叫びたくなるほど焦燥を感じた。この頃の苦しさを変形させて、後に『新釈 走れメロス 他四篇』に書いた。  身動きがとれなくなっている私を見かねた父が、豊富な人生経験から来る的確なアドバイスをした。 「とりあえず外国に行ってこい」  理屈ではない。  何かに行き詰まった人間は外国へ逃げる。それでよいのである。

そうなんだ。煮詰まったら逃げりゃ良いんだ。出来れば外聞の良い方へ。

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その春から夏にかけて、私は公務員試験にことごとく落第して、就職先は決まらなかった。そのかわり、父に「絶対に受けておけ」と言われていた大学院の試験だけは合格した。他に行き場所はない。 「竹を研究してみよう。それで駄目なら、もう駄目だ」  私はそう思い、大学に戻ることを決めた。

しかし、この、お父さん、随所でいいアドバイスを与えていますよ。これは。凄い。あたくしも、尊敬されるような父にはなれそうもありませんが、こういう気の利いた父にはなりたいものです。

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アルバイトさえすれば引っ越すことはできた。仕送りも貰って、身動き取れないほど貧乏だったわけではない。たんに億劫だったのである。「学生時代に何をすべきか?」という私の問いに、当時まだ健在であった祖父は「本を読め」と言った。母は「バイトをするぐらいならば勉強しろ」と言った。

また森見家の親御さんたちもいい感じなのよ。そして森見さんもよく覚えている。こういうやりとり、した記憶もないし、したとしても覚えてない。これじゃあきまへんわな。己の人生に責任を!

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以前、上田氏がこんなことを言った。 「喫茶店を舞台にして何か作ってください、と言われても困るけど、『水没した喫茶店』を舞台にして何か作ってくださいと言われれば色々と想像が膨らむ」  それを聞いて、「なーるほど」と私は思った。

上田誠さんの劇は曲がれスプーンくらいしか知らないのですが、ヨーロッパ企画の劇はコント的で面白いとは思っていました。おやぎはぎとやってた雨天順延ナインとかよかったな。

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「笑い」というのは、ちょっと油断すると自虐的になりすぎたり、攻撃的になりすぎたりする。しかしヨーロッパ企画の舞台では、いわゆる常識に基づいて登場人物を「笑いものにする」ような印象がほとんどない。

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常識とズレているのは「ヘンテコなシステム」の方なのだから、人物たちが右往左往するのも納得がいくし、彼らを否定する理由もないわけである。そして人物たちがヘンテコなシステムとぶつかってムキになるほど、彼らはいよいよ人間らしくなり、ヘンテコなシステムはいっそうヘンテコに感じられてくる。そう考えるなら、我々がヨーロッパ企画の舞台を観ているときに心おきなく笑っている対象は「ヘンテコなシステム」そのものなのである。

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たいへんステキだと思うのは、上田氏がこれほどシステムに興味を持っているのに、決して非人間的、図式的にならないことだ。システムを表現するのは人間だという点を絶対にないがしろにしないからであり、いくら俯瞰していても地上数十センチという体感的距離を忘れないからだろう。

誰かを嘲笑って興味を刺激するのではなく、あくまでシステムをへんてこにしててて面白がらせる。このへんの博愛的というか人道主義的と言うかフェアネスというか。こういうのが好ましいですね。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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