最後はもはや神話『きみの世界に、青が鳴る』 1

最終巻でもまだまだ謎。むしろ深まるか。

そして七草はどんどん理解不能な方向に。神になろうとしているのか。

位置: 218
安達さんが、現実と魔女の世界、両方で生まれた理由はとてもシンプルです。彼女の母親が妊娠中、つまりお 腹の中に安達さんがいるときに、魔女の世界で生きていくことを決めたからです。

とんだどんでん返し。シンプルかしら。妊娠中でも自我があるという大前提にもぎょっとしますが。

位置: 272
実のところ、私の家庭も、それほど大きな違いはありません。魔女の血を引いている人たちはどうやら、家庭を持つには不向きな傾向があるようです。

悲しい告白だが、まぁ、統計的に観てそうなのかもしれないですな。強すぎる力を持った人間は他人と協力したりしなくたって生きていける。

位置: 384
「そこを無視しちゃだめでしょ。現実をみない理想主義なんて、暴力みたいなもんだよ」
「まったくだね。でも理想を想像しない現実主義なんてものは、自殺志願者みたいなものだ」
「どうかな。自覚はないんじゃない?」
「ならいっそうひどい」
こんなにぞんざいに言葉を扱っても、おおよそ互いの言いたいことがわかるくらいには、僕たちは価値観を共有している。同じ言語を同じ意味で扱っている。

キレッキレのやりとり。こういうところは本当に魅力的だよね。

位置: 407
「本当はひとりの人間を、こんな風に簡単に表現するべきじゃないんだろう。もっと複雑なまま受け入れないといけないんだろう。でもね、無遠慮にまとめてしまうと、君は絶望を愛している」

「絶望を愛している」なんて素敵で中二的な言葉。
こんなの、恥ずかしくって言えないです。

位置: 495
「こんな風にも表現できる。オレは、目にみえない怪物の前で立ちすくんでいた。それはありもしない怪物なんだ。オレの目にはたしかに見えていて、乗り越えられなかった、でも存在しない怪物だ。だから本当は、理由なんてない」
僕は頷く。
「よくわかる」

この辺、なんだか村上春樹みたいだなぁ、と思いました。
たとえ話がより分かりにくいってやつね。そして登場人物たちは読者を置いてけぼりで共感する感じ。

位置: 540
「他人に求めるのは、上手くいかなくても笑って済ませられることだけにしろよ。それ以上は望み過ぎだ」
かもしれない。
でも。
「なにもかもがそんなに上手くいくわけじゃないだろ? 絶対に失敗したくない、自分の手では成し遂げられないことだってある」
ならもう、誰かを当てにするしかない。僕にできる努力は、誰を、どんな風に信じるのかだけだ。
一〇〇万回生きた猫は大げさなため息をついた。
「君はオレを、なんだと思ってるんだ?」
「友達だよ。他にはない」
「友達ってのはどういう意味だ?」
「ある 聡明 な女の子の話じゃ、根拠なく信頼できる相手のことらしい」
堀があの手紙に書いた友達の定義が、僕は気に入っていたけれど、一〇〇万回生きた猫は首を振る。
「オレにとっての友達って奴は、そうじゃない。信頼なんてものはいらないよ。たまに、暇つぶしにつき合ってくれるだけでいい」
「そう」
その定義にも、納得できる。
「なんにせよ、頼むよ」
「ああ頼まれた。そしてオレは、引き受けなかった」
「それでいい」
友達という言葉の定義に関わりなく、僕は一〇〇万回生きた猫を信頼している。
馬鹿みたいに優しい彼は、きっと、断った頼まれごとまで果たそうとする。

なんでここだけハードボイルドなんだろうか。猫と自分の会話だけ。しかもかなりカッチョイイ。

形而上の話ばかりが飛び交って、実際にどうなったのかチンプンカンプンだしどうでもよい、みたいになってましたね。読んでいて。

でも、やっぱりセリフ回しには魅力を感じるんだな。

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