黄前ちゃん、2年生『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編』 2

思えば2年生が一番楽しい時期かもしれませんね。

位置: 2,429
注目を浴びるのは苦手だ。他人に勝手に期待されるのは、もっと苦手。でも、自分が集団の一部になった瞬間、その苦痛は喜びに変わる。自分が音楽の一部になる。作り上げた演奏が、みんなから賞賛される。そのことが、楽しくて仕方ない。

これ、わかる気がするんですよね。団体競技の醍醐味でもある。個人競技が苦手なあたくしだからかな。落語は完全に個人競技なのにね。

位置: 2,635
青い鳥はその美しい翼を動かすと、力強い動きで遠い空の彼方へと消えていった。リズはその方角を、いつまでもいつまでも眺め続けていた。
了、という最後の一文字を見届け、久美子は文庫本をぱたりと閉じた。 「よくわかんないなあ」
ぽろりと漏れたつぶやきは無意識のものだった。

いや、これ、そう簡単にわかってたまるか!って話でね。
それを代弁するのが主人公であって本当に良かった。久美子大好き。

位置: 2,769
「あのときうちがなんも状況をわからんかったのは、とにかくいろんなもんが足りんかったからやと思うわけ。実力も、知識もな。で、そういう状態の人間っていうのは、自分に自信を持ちにくい。なんか気になるとこがあっても、自分なんかが言ってええんかなって思ってまう。それってさあ、なんかめっちゃ嫌やん。やからさ、うちは初心者の子らにそういう想いはさせたくないわけ

位置: 2,778
「どう? うちのこともっと好きになったんとちゃう?」
もっと、というところに友恵らしさがにじみ出ている。思わず苦笑し、久美子は静かに肩をすくめた。
「私が先輩のこと好きっていうのは、もう確定なんですね」
「え? だって黄前ちゃんがうちのこと好きなんて当たり前やんか」
「……まあ、否定はしませんけど」

そういう加部ちゃん先輩の意見、あたくしも同調します。
しますが、これが第三楽章で久美子に思わぬ形で災いをもたらします。怖いね、こういうの。

あたくしも何事においても下手な方だし、発言力弱い系だからこそ、こういう方針に共鳴しちゃうんかな。

位置: 2,797
夏の気配をガラス瓶に封じ込めたら、こんな色になるのかもしれない。そんな馬鹿みたいなことを、久美子は漠然と考えた

バカみたいに詩的。

位置: 2,944
「これはアタシの解釈やけど、この話は幸福のジレンマをテーマにしたものやって思ってる」
「幸福のジレンマぁ?」
葉月の声が裏返った。なんだか小難しそうな単語に、久美子も身構える。
「なんなのそれ」
「幸福を得た人が、自分から幸福を捨てたがる心理みたいなもん。まあ、いまのはアタシが勝手にそう呼んでるだけで、そういう言葉がほんまにあるかは知らへんけど。自分のいまの状態があまりにも幸せすぎて、それがいつ終わるんやろうって怖くなって、そのせいで逆に精神的に追い詰められる。見えない終わりにおびえるくらいなら、自分からこの幸福状態を終わらせてやろうって思考やな」
「せっかく幸せやのに、それを自分からぶち壊しちゃうわけ? けったいな考えやなあ。ほんまにそんな変なやつおるん?」
「緑は変とは思わへんけどなあ。自分から不幸になりたがる子って珍しくないやん」
悲劇の主人公になりたい。そうした 仄 暗い願望は、意外にも身近なところに存在する。自分から友人を突き放したくせに、独りぼっちだと悲しむ女子。素敵な彼女がいるにもかかわらず浮気し、捨てられたと嘆く男子。

かつて、高校の時、友達に「人間は己が幸福になりたくて生きている」と言われて「そうかなぁ」と返した記憶が蘇りました。愚行権、とでもいうか、人間は愚かな行動をする自由も楽しみもあるよな、ってね。
ちょっと高尚すぎてあたくしにもピンときませんが。

位置: 3,216
だから、と緑輝が言葉を続ける。
「自分がいいひんくても構わへんなんて考えは、もってのほかやと緑は思うなあ」
図星を突かれたのか、求の肩がびくりと揺れる。泳ぐように逸らされた瞳が、再び夏紀を映し出す。あぁ、もしかして。と、久美子はそこでなぜ求が緑輝にいさめられているのかを理解した。彼は、恐れているのだ。自分のせいで他者が枠から弾き出されてしまうのではないか、と。
今年の一年生部員の数は、四十三人。低音パートには新しい仲間が四人も増えた。そして、人数が増えれば増えるほどオーディションの倍率は上がる。

求の優しさね。かわいいね。

位置: 3,280
いやに饒舌だな、と久美子は胸中で独りごちる。普段の奏なら、社交辞令にまみれた言葉で適当に処理していただろうに。心を開いた友人の前だからだろうか、奏の横顔からはぽろぽろと笑顔の仮面が剥がれ落ちていた。彼女は未熟だ。なのに、自分では己の感情を完璧にコントロールできていると信じている。隠し切れない 傲りに、久美子は少し安堵した。その愚かさこそが、彼女が年相応の子供であると伝えているようなものだったから。

奏でのギャップ萌えですね。こういうキャラクターは必ず必要。

位置: 3,461
「不安やねん」
麗奈は言った。
「一緒にいる口実が、いつかなくなるんじゃないかって」

大人になる不安、ね。香織先輩もあすかに同じ気持ちを吐露してたな。
あたくしも、もちろん、そういう気持ち、なかったと言ったら嘘になるな。

位置: 3,575
「北宇治が全国に行けたらええなとは思う。でも、そのメンバーにうちが入ってなあかんとは思わへん。メンバーに入るために必死で努力したいとも思えへん。後輩がAで先輩がB、それでもべつにええやん。できるやつが一生懸命やる、ただそれだけの話やんか」
でもさあ、と友恵は言葉を続けた。軽薄な口調に、ほんの少しの苛立ちが混じる。
「周りの目はちゃうやん。三年生なのにBでかわいそうとか、そうやって言われるやん。自分ではなんも思ってへんのに、勝手に同情の対象にされるやん。そういうの、ずっと嫌やった。

加部ちゃんの献身。
結局、本人が気にしなきゃいいんだよね。
いいんだけど、それが10代に出来るかって言われると別。

位置: 3,623
「言っとくけど、うちが支えたいと思ってるのは優子だけやないからな」  口をぽかんと開けたまま、夏紀はその場で制止した。引き締まった彼女の頬がじわじわと赤く染まっていくさまを、久美子は他人事のように眺めていた。

夏紀も加部ちゃんも男前。
サブキャタクターをじわりじわりとかっこよくさせるの、大事ですな。

位置: 3,742
「最初ね、私、奏ちゃんのこと春に卒業した先輩に似てるなって感じたの。要領がいいところとか、人をよく見てるところとか。でも、ずっと一緒にいたら、やっぱり全然違うなって思った。奏ちゃんは、甘いよ。詰めが甘い。利己的な性格を演じてるのは、それがカッコいいと思ってるから?」

久美子の小悪魔化。それにしても、思いやりのある人ばかりやね。

位置: 3,904
突如として楽譜に描かれていない音を奏でた。外した。そう、久美子は思った。だが、隣にいた夏紀はそうは思わなかったらしい。顔をしかめ、彼女は大きく舌打ちした。
「あの馬鹿」
そのつぶやきにかぶさるように、再び的外れな音が響いた。これまでの練習で、一度たりともミスしたことのない箇所だった。わざとだ。そう久美子が確信した刹那、夏紀が蹴破るようにして音楽室の扉を開いていた。

夏紀の衝動的なふるまいはサブキャラクターとして必須ですね。

位置: 3,988
「下手な先輩は、存在自体が罪ですよ。本人が気にしなくても、周りは気にする。みんな、中川先輩にAになってほしいと思ってる。

位置: 3,999
私は、周りから疎まれたくない。敵を作りたくないんです。オーディションでミスしたのは、あなたのためなんかじゃない。私自身の身を守るためですよ」

位置: 4,030
夏紀を好きになってほしい。そう何も考えず言い放った自分は、正真正銘の馬鹿だった。あのときかけるべきだった言葉は、そんなものではなかったのに。
奏の腕を取り、久美子はその双眸をのぞき込む。
「奏ちゃんは、頑張ってるよ」
そう告げた瞬間、奏の目が見開かれた。

今後も度々でる、小悪魔・久美子。
人心掌握に長けた彼女は今後も大活躍します。

楽器そのものの魅力も描きつつ、メインの人間関係はやはり重厚。
この物語、やはり本物ですね。

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