黄前ちゃん、2年生『響け! ユーフォニアム 北宇治高校吹奏楽部、波乱の第二楽章 前編』 1

感動の第一楽章が終わり、第二楽章。
個人的には夏紀がやっぱり好き。

新年度を迎えた北宇治高校吹奏楽部。二年生となった久美子は、一年生の指導係に任命される。低音パートに入ってきたのは、ユーフォニアム希望を含む4人。希望者がいたことにほっとする久美子だったが、低音の新入部員たちはひと筋縄ではいかないクセ者だらけだった。新しい体制となった北宇治吹部は、はたして無事コンクールを迎えることができるのか!? アニメも大人気の青春エンタメ小説、新章スタート!

2年生といえば、中間管理職的な感じ。
受験でも新人でもない。そこのあたりのフワフワ感も漂わせつつの、第二楽章。

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彼女が演奏している曲、『愛の挨拶』は、イギリス人のエドワード・エルガーによって作曲された。のちに妻となるキャロラインに贈られたこの曲は、日本でも高い人気を誇る。

緑ちゃんが何気なく演奏しているこの曲、もちろん聞いたことはあります。しかし、名前は知らなかった。こういう知識をつけてくれるのが読書のいいところでもあります。

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久美子のアドバイスを、奏は真剣な面持ちで譜面の余白に書き留めている。奏は他者を頼るのが上手く、わからないことがあればすぐに久美子に相談してきた。二人のやり取りはすべて、すぐ前の席に座っていた夏紀には筒抜けだったことだろう。そしてこのときには、夏紀はすでに気づいていたに違いない。  入部して以降、奏は一度として夏紀に助言を請うたことがなかった。

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「ほんまごめん。完璧に覚えとく。約束する」  三年生二人のやり取りを、一年生部員たちが見守っている。奏は普段どおりの人当たりのいい笑顔で、そして美玲は無表情のまま。彼女たちが内心で夏紀にどんな印象を抱いているかはわからない。だが、それがあまり芳しいものでないことだけは、はたから見ている久美子にも容易に察せられた。

下手な先輩の大変さ、あたくしもよく分かります。
あたくしも実際、大学時代はそうでしたからね。あれは辛かったなー、ある意味で。一方で全然辛くなかったって気もしますね。辛いだけだったら続かないものね。

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「だから、トランペットに行ってBになるのが怖かった。同じ中学だった子はAなのに、もし自分だけBだったら。そんなの、プライドが許せない。だから、チューバにしたんです。三年間のステータスを、私は手放せなかった」  ギクリと心臓が跳ねたのは、自分のなかに思い当たる節があったからだ。経験者としてのステータス。それを、これまで久美子は一度だって手放したことはない。

当たり前だよね、そんなの。
積み上げたんだもん、こだわってプライド持って当然。

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「私、中学生のとき、美玲と同じような状況になったんです。中二のときでした。ユーフォは私のほかにもう一人いて、彼女はすごく頑張り屋でした。誰よりも早く学校に来て練習して、誰よりも遅くまで残って練習してました。私は部活時間だけしか練習しなかったし、周りから見たら私のほうがやる気のない生徒に見えたかもしれません。でも、私のほうがユーフォが上手かった。あの子には、センスがなかった」
「そんな言い方はないんじゃない?」
「じゃあ、言い方を変えます。あの子は根本的に間違ってた。練習方法が非効率的すぎたんです」

センスがない、ってのはそんなにひどい言い方ではない、とあたくしは思う。
ピンポンでスマイルが「アクマには才能がないだけだよ、大騒ぎするほどのことじゃない」って言い放つ場面がありますが、まさにそれ。才能がないのは罪ではない。センスが無いのも。

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「楽器は、ただがむしゃらに吹けば上手くなるってもんじゃない。むしろ身体を疲弊させて、ベストな状態から遠ざかる。だらだらと集中力を切らした状態で、長く学校にいるあの子を、先輩たちは頑張ってると評価した。でも、それは違うでしょう? 短い時間でも、集中して効率的に練習する生徒のほうが、実力は確実に伸びます。先輩たちは練習時間に関係なく、実力のあるほうの生徒を選ぶべきだったんです。なのに、二年生のコンクールでAに選ばれたのはあの子でした。みんなが口をそろえて言いました。『あの子はいっぱい頑張ってたから』って」

頑張った意見は否定しづらい、ってのは社会でもありますよね。
応報しない社会は生きづらいという価値観。長い目で見れば弊害を生むほうが多いと思うんですけど、まぁ、気持ちはわかる。

あたくしも大学4年のときはお情けでレギュラーっぽくなってたからなー。今でも罪の意識がないといえば嘘。

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「……なんて、余計なことをお話してしまいましたね。久美子先輩って、本当に聞き上手なんですから。ほら、そろそろ練習に戻りましょう。みんな待ってますよ」
奏はそう言って、まるで何事もなかったかのような顔でドアノブに手をかけた。せっかく吐露した本音を、彼女は余計なものとしてこの場に捨て置こうとしている。久美子が聞き上手だなんて、そんなのは関係ない。 箍 が外れたように奏がまくし立てたのは、くすぶり続ける過去を一人では抱え切れなくなったからだ。誰かに認めてもらいたい。自分が正しいと言ってほしい。蓋をして押さえ続けた欲求のはけ口に、たまたま久美子が選ばれただけ。
「……私は、みっちゃんは変わりたがってるんだと思った」

その「たまたま」でも、そこにいるのが久美子が主人公たる所以だし、この本が面白い所以ですよね。人の本音が漏れる場所、それが久美子。

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「……久美子先輩も、ああいうのがいいと思います?」
ウォーターキィを押さえながら、奏が楽器を傾けている。奏の隣には夏紀が立っており、マウスピースから楽器に息を吹き込んでいる最中だった。
「ああいうのって?」
「ああいう馴れ合いですよ」
「馴れ合いって……そういう言い方はやめたほうがいいんじゃない?」
「そうですか。先輩が言うならば控えます」
久美子がたしなめるも、奏は笑顔でそう答えただけだった。美玲がチューバ部員の輪に溶け込んで以降、奏はときおり、抱えた毒を久美子だけに見せびらかす。それが奏なりの信頼の証なのか、それともこちらを試そうとしているだけなのか。久美子にはいまだ判断がつかない。

奏、なかなかいいキャラしてますよね。
振り回される久美子も可愛い。

続きます。

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