『私の消滅』は戦慄するくらい怖い場面と、よくわかんない場面と、両方ある 2

序盤は、結構、戦慄するような場面が多くて、急いでページをめくりました。しかし、後半になり真相が明らかになるにつれ、尻すぼみ。

p97
人間は脳内の海馬を損傷すると、新たな記憶を保つことができなくなるが、古い記憶は 依然残る。これらの「長期記憶」は大脳皮質内にあるとされる。ECTはそこに作用して しまう。
過剰なECTで記憶を完全に失うケースも発見された。幼児のような状態になることも。 通常は時間とともに記憶は少しずつ回復するが、脱落したままのケースもあった。 この「幼児のような」状態の時、様々な言葉、意見を語りかけると、それらは直接彼ら の「白紙」の脳に吸収されていく。「あなたは他人に対し優しくするのが好きだ」と語り かけると、その人間は善的な傾向をもつようになる。「紙きれが落ちてると拾わずにいられない」と語りかけると、その患者はいつまでもそのようになった。
この効果は絶大だった。 「私」とは何か。特定の方法下に置かれる時、それはもうわからなくなる。

人間てのはそんなに簡単なものなんでしょうかね。
にわかには信じがたい。そんなに脆いもののせいで、一喜一憂しなきゃならんのですか、我々は。信じたくない、というのが本音でしょうね。

p121
繰り返し強制されることを、自発的なものに彼の脳 が変えたのかもしれない。統合失調症の人間は、付近の住民が自分の悪口を言っていると
思い込んだり、ありもしない盗聴に怯えたり、自分を別の人間と思い込んだりもする。彼 もその病状の例にもれず、自分が何か大きな物語の主人公であるかのように、身分を手に 入れ逃亡しなければならないと固執した。

よく迷惑メールで「盗聴がー」って言っている人のメッセージが届くんです。まるで違う人から。みんな統合失調症だったんですね。なんだか一定性があって怖かったんですが、そういう病気だとわかればなるほど、安心。

後半は特に特筆すべき点が見当たらず。序盤のワクワク感に比べると後半はやることが小物感にあふれてて、尻すぼみでした。結局、女かよ、ってね。

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