やっぱり武田綾乃さん只者じゃない。原作『響け!ユーフォニアム』

あすか先輩、いいよね。

p209
「そんなこと言われてもなー、葉月ちゃんが吹こうが吹くまいがうちにはどうでもい いからなー。さっさと立ち直れよとしか言えんわ」 「そんな冷たいこと言わないでくださいよ! 同じ低音パートじゃないですか」
緑輝の言葉に、あすかは乾いた笑いをこぼす。 「だってあの子B確定やろ? うちが助けるメリットないやん」

賢いあすかはたぶん、こう言えばどう思われるか知っているはず。知っていて、あえて言う。突き放す意味もあるんでしょう。情に疎い人であるという認識はある程度ラクですからね。

p216
指揮者の仕事は、ただ本番で棒を振るだけではない。むしろそれはその役割のほん の一部に過ぎない。彼らが指揮棒を振るのは、演奏者に音の入るきっかけレ イミングの指示を行うためだ。そして全体の音のバランスを聞き、曲をまとめ上げる 指導をする。 「本番以外の場で、彼らはその曲の持つ構成や作曲家の意図を把握し、表現や曲の流 れを奏者に伝える。この指揮者の指示により、演奏のスタイルや曲のイメージが大き く変わる。そのため、指示の違いがそのまま指揮者の個性となり、楽団の評価へとつ ながっていく。

恥ずかしながら知りませんでした。よく考えればそうですよね。
むしろ本当にすごい人は当日の指揮なんざ要らないんじゃないか。ラグビーの監督みたいに。

p221
ミスしたらどうしよう。怖くて仕方ないのに、それを楽 しいと思っている自分がいる。足元から上ってくる熱が、胸のあたりの器官をぎゅっ と締め上げる。

こういう感覚、落語でも感じたことあります。あれって病みつきになるんですよね。楽しいんだなー。

p227
「葵ちゃん、」 「 何?」
彼女は振り返る。 「部活辞めたの、後悔してない?」 「してないよ。まったくしてない」 「晴れやかな表情で言う彼女の指が、自身の腕をぎゅうとつかむ。白い皮膚に残る赤 い痕。それがあまりにも痛ましかったものだから。 「そっか」 久美子は笑って、だまされたふりをした。

ここね。引き算したんだろーなーと思います。言葉を削ぎ落として、本当に必要なものだけ残してある。最後の「だまされたふりをした」っていいよね。余韻がある。白い皮膚に残る赤い痕とはなんでしょ。楽器のタコとか?「そっか」が間に挟まるのがリズミカルでいいよね。

p255
香織がおずおずと口を開く。 「れ、麗奈ちゃん、ほんまごめんな。この子、私をかばってくれてるだけやから」 「先輩!」 「優子も、変なこと言わんといて。私はべつに、気にしてなんか—」
香織の言葉が、不自然な場所で途切れる。こらえていたものが弾けたように、彼女 一の瞳から涙があふれた。それは頬を伝い、彼女の滑らかな肌をゆっくりと滑り落ちていく。教室が一気に静まり返るのがわかる。目頭を指先で押さえ、香織はそれでも歪な笑顔を作った。 「ほんまに、大丈夫やから」 その声は、震えていた。

香織先輩いいよね、可愛くて。陵辱したくなるタイプ。
そのケはあたくしにゃありませんが。とかく天使。優子の気持ちもわかるなー。ただ、このときの優子の気持ちたるや。大好きな先輩を自分が追い込んだ、間接的であるとはいえ。そのことは軽くはないよね。

p265
「私、冗談でもあすかにはそういうこと言ってほしくない」 「そんなことって?」 「……麗奈ちゃんのほうがいい、とか」
「うち、そんなこと一切言ってへんやん。それ言ったの香織やろ?」 「あすかが噴き出す。反論できないのか、香織が苦し紛れに何やら言い返している。 「なんだか甘ったるい会話になってきた。顔をしかめた久美子に、突如背後から声がか かった。

百合百合してんなー。いいよね。片思いっぽくて。

The following two tabs change content below.
都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする