『響けユーフォニアム』の演奏描写

文字で演奏を表すスタイルの、一つの究極系だと思います。

p301
突入する。ホルンの華々しい音色、トロンボーンとユーフォニアムの力強い旋律に、 トランペットのメロディーが乗りかかる。急激なクレッシェンド。その音量は一気に 極限まで高められ、そして唐突に終わりを告げる。 課題曲の余韻が残ったままの状態で、部員たちは自由曲へと意識を移す。 しんと静まり返ったなかに、トロンボーンのハーモニーが響く。そこに流れる澄ん フルートのソロ。それを引き継ぐように、コルネットのソロは始まる。ゆるやかに 進む音楽。空気へと溶けていく、あまりに美しい音色。それにほんの少しの彩りを添 えるように、ユーフォニアムが音を紡ぐ。音と音が重なり合い、音楽はじわじわと盛 り上がりを見せる。それは一度壮大な終わりを迎え、すぐさま第三楽章へと突き進む。

以前、音楽を映像描写とかで表すのやめれって話をしたんですが、その結論がここで出たかもしれません。あたくしはこっちのほうが断然好み。ただ、起こったことを文字に簡潔に起こすだけ。特にそこに必要以上の感情や叙情的なものは出さない。

そこに、読者の想像が掻き立てられるわけだ。この、読者を信用した書きっぷり、好きだぜ。

p119
水面に映る花火は一瞬で散っていく。夜空に咲くあまりにもろい徒花に、麗奈が感嘆の息を吐く。 「綺麗やね」

こっから2巻。花火を「徒花」という感性。お前、いくつだ?

p193
みぞれちゃんが気にせんでええねんて」 「でも、このままじゃ、あすか先輩が悪者に」 「けど、まだ怖いんやろ? 本番に支障が出るほうがよっぽど迷惑や」
どうやらあすかとみぞれが話しているらしい。声の方向から考えるに、暗幕の裏に いるのだろうか。練習に集中していたせいで気づかなかった。久美子はぐっと唾を呑 み込む。盗み聞きっていけないことだよね。そう思いつつも、身体が動かない。押し 殺していた好奇心がひょっこりと顔を出す。

2巻の中心人物、みぞれちゃん。そしてどこでも「遭遇」してしまう久美子の主人公特性。流石だよね。

主人公というのは格段つよい必要はない。ただ、その場に「居る」ということなんですな。

p256
みぞれが唇を噛み締める。ねっとりとした沈黙が、二人のあいだに透明な壁を作り 上げていく。彼女の指が、自身の腕を強くつかんだ。薄桃色の爪が、柔らかな皮膚に 三日月型の痕を残す。
「希美は、特別なの。私にとって、大切な友達」
絞り出された声は、かすれていた。伏せられた験が微かに震える。長い睫毛が小さ く上下するのが見えた。でも、と彼女は言葉を吐き出す。その顔が、くしゃりとゆが んだ。闇色をした瞳のなかに、赤い光が混じり込む。
「違うの。私にとっての希美と、希美にとっての私は、全然違う。私にとって、あの 子はいちばんの友達だった。だけど、あの子にとって、私はただの友達の一人なの。

ねっとりとした沈黙、薄桃色の爪。いいよね。表現が、さ。耽美的な描写が多感な女子高生にビシッとハマる。

結局さあ、と 優子は笑いながら言葉を吐き出す。
「結局、うちは希美には勝たれへんねんなあ。一年も、一緒にいたのに。それでも、 あの子の一番は希美なんやなあって」
冗談でコーティングされた台詞が、久美子の心臓にチクリと刺さる。そうですね。 そんなことないですよ。伝えるべき言葉が、浮かんだり消えたりを繰り返す。
「そんなもん、しゃあないやん。希美ってアンタの百倍はいい子やし」
久美子が口ごもっているあいだに、夏紀が先に口を開いた。

夏紀と優子のコンビ、最高だよね。夏紀の男らしさたるや。受け入れて演じてるのかしら。いいよね。

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