『清貧譚』感想 しかし天才なんだろうな

太宰はやっぱり才能あるんだよなぁ。

「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の短編小説。初出は「新潮」[1940(昭和15)年]。「聊斎志異」における「黄英」の翻案小説で、菊作りの愛好家・馬山才之助が旅の帰途で知り合った姉妹と意気投合し、家の納屋で生活させるという話である。才之助の生き方と頑固な性格を喜劇的に描き出している。

太宰が好き、って言いづらい雰囲気はたしかにあって、それこそ複雑な文脈がありすぎる。宮沢賢治好き、みたいなもんで。言うと余計な先入観まで引き連れてしまいそうで。しかし『清貧譚』がいいね、なんて言う人は多くはいなそう。

位置: 59
才之助の熱心な申し入れを拒否しかねて、姉と弟は、たうとうかれの向島の陋屋に一まづ世話になる事になつた。来てみると、才之助の家は、かれの話以上に貧しく荒れはててゐるので、姉弟は、互ひに顔を見合せて溜息をついた。

歴史的仮名遣いだしね。しかし清貧というのは東西問わず人気のある思想ですね。

位置: 93
才之助は、けさは少からず、菊作りとしての自尊心を傷つけられてゐる事とて、不機嫌であつた。 「お断り申す。君も、卑劣な男だねえ。」と、ここぞとばかり口をゆがめて軽蔑した。「私は、君を、風流な高士だとばかり思つてゐたが、いや、これは案外だ。おのれの愛する花を売つて米塩の資にする等とは、もつての他です。菊を凌辱するとは、この事です。おのれの高い趣味を、金銭に換へるなぞとは、ああ、けがらはしい、お断り申す。」

食わねど高楊枝といいますかね。
プライドなんぞで飯は食えないと思いますが、そうじゃないんですね。

位置: 204
菊の苗は、わが庭に移し植ゑ、秋にいたつて花を開いたが、その花は薄紅色で幽かにぽつと上気して、嗅いでみると酒の匂ひがした。黄英のからだに就いては、「亦他異無し。」と原文に書かれてある。つまり、いつまでもふつうの女体のままであつたのである。

変な最後。弟は菊になり、姉は普通の人間でした。なにそれ?

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