大崎梢著『背表紙は歌う 井辻智紀の業務日誌』感想 読者への挑戦に……完敗!

井辻くんシリーズ2作目。

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本は返品可能という特殊な商品だ。仕入れのさいに精算がなされていても、期限内であれば返品がきき、お金が戻ってくる。
とはいえそれは引き取る先あってのことであり、先方が潰れてしまうと返せなくなる。不良在庫になったあげく破棄せざるを得なくなったら、ただでさえ利益率の悪い薄商いを続ける書店には大きな痛手になりうる。
そこで危ないという噂が流れると、本格的な業務停止になる前に、手持ちの出版物を急いで返本してしまう。のちのち希少価値が出て売れ筋に変わる本もあるから、必ずしもすべて返すとは限らない。

これって聞いたことありますよ。再販制度とかってやつですよね。
なかなかこれはこれで癖のあるシステム。

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なぞなぞを出します。
用意はいいですか
厚子 ちゃんは女優志望の女の子です。
高校を卒業し
九州から引っ越してきました。
試験を受けて、俳優養成所に通っています。
仲間もできました。
お父さんやお母さんには心配をかけたまま
早く安心させてあげたいと思っています。
自分の出る舞台に呼んであげるのが夢です。
目標を持ち、バイトも頑張っている厚子ちゃん。
今すんでいるのは、どこでしょう。

この謎はなかなか粋だったと思います。
わかりやすく謎解きを迫られ、白旗をあげ、答えを読んで溜飲を下げる。読者への挑戦ですね。

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青森生まれの 木村 チヅコちゃんと、
広島生まれの 浅野 ミツハルくんが、
サッカーの試合を見に行きました。
沖縄生まれの 高石 ヨウマくんが、
シュートを決めて勝ちました。
勝ったのは、どのチームでしょう。

これは難題でした。難しい。
答えを聞いても納得しきれぬ。思うに、答えとそのアプローチに対して、この文章が長すぎるのが気に入らないんですな。もっと雑味を取り除いて問題を出してほしい、というわがままなやつ。チェーホフの銃的な。

しかしミステリも物語も良く出来ていますなぁ。

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