『平台がおまちかね 井辻智紀の業務日誌』感想2 ミステリより業務が面白い

キャラクターが魅力的、ってのはありますね。井辻さんと真柴さんのペアもいい感じで、もっと読みたいと思わせてくれます。

位置: 2,646
地方には〝切り捨てられ感〟が根強くあり、それは単なる思い過ごしではなく、深刻な現実だ。話題の本は思うように入らず、刷りすぎて余った本だけが過剰に送りつけられ、客注の入荷も 滞る。人件費のカットで店の活気は失われ、ベストセラーに沸く都会の大型店はまるで別世界。不平や不満は日々、降り積もる。

これは行間から苦労がにじみ出てますねぇ。やっぱり地方はあえいでるんだろうなぁ。あたくしのように東京に住んでいながら電子書籍ばっかり買っている人は、やっぱりどこか変なのだろうか。

位置: 2,649
けれどもほとんどの人が、ある日突然現れる営業マンを歓待してくれるのだ。全国を渡り歩き、さまざまな書店に顔を出しているように見受けられる営業は、あたかも野を越え山を越えやってくる旅の行商人だろうか。みんな生の情報を 渇望 している。このままで終わることなど誰も望んでいない。
「面白い情報をいっぱい持って、また来てね」
「それまでなんとか持ちこたえるから、わたしのいるうちに顔を見せてね」 「いい本を作って、うちの平台を埋め尽くして」
飲み会の最後、口々に言われたのはそんな言葉だった。

泣けてきちゃうなぁ。いいセリフだ。みんな本が大好きなんだなぁ。

位置: 2,762
「でも遅かったよ。おれは叔父さんたちの喜ぶ顔が見たかった。何ひとつぜいたくをせず切り詰めた生活の中でこつこつ本の世話をし続け、どれだけいいことがあったんだろう。いやな思いをたくさんしてきたはずだ。おれのこともさぞかしがっかりしただろう。あんなによくしてくれたのに、一度も感謝の言葉を言わず、最後は 後足 で砂をかけるようなまねをしてしまった。恩を返すどころか、逆恨みして捨て台詞を吐いてきた。それがどんなに人でなしなことなのか、わかったけれどもう遅い。おれは叔父さんたちにも、一番大好きだったユキムラ書店という場所にも、何も報いることができなかった」

ユキムラ書店の話、ちょっとわからない箇所あったんだよなぁ。
いい話だったけどね。

位置: 2,915
智紀は早々に自分の推薦本を決めた。ハヤカワ・ミステリ文庫『幻の特装本』だ。シリーズになっていて一作目は『死の蔵書』。莫大な価値を秘めた古書をめぐって殺人事件が起き、その真相を追う元刑事の話だ。古書も古書界もまったく知らなかった智紀にとって、まさに 瞠目 の一冊となった。思わぬところにお宝があったという面白さでぐいぐい読ませ、大満足の読後感をもたらした。

ジョン・ダニング氏の本はKindleになってないのよねー。無念。でも読みたいな。

位置: 2,998
『忘れ雪』新堂冬樹
〈ロマンチックな導入部と、息もつかせぬ後半の展開。ただの純愛物語ではありません。力強く 儚い。この著者ならではのぜいたくな一冊。ともかく表紙のワンコをお連れください〉
『青葉繁れる』井上ひさし
〈このところ伊坂幸太郎さんの御著書でブレイク中の仙台。でも、ここにもう一冊、すばらしい青春小説があります。仙台出身の私は、これを推さずにいられない!〉
『カレーライフ』竹内真
〈どこを取ってもカレー、カレー、カレー!! 寝不足のときに読むと危険。お腹がすいているときに読むとなお危険〉
『ライオンハート』恩田陸
〈ほんの一瞬だったり、いっしょにいすぎて気づかなかったり。でも……何度も、何度も、時空を超えめぐり合う二人の深い愛情に、思わず共感しホロりときました!〉
『柳生非情剣』隆慶一郎
〈剣に生きる一族・柳生の傑作揃いの短編集。男たちの濃密な時代小説をご堪能あれ〉 『母』三浦綾子 〈この本には、忘れてはいけない日本の母がいます。読んで感動した人すべての、きっと〝母〟です。自分はそう思います。だからときどき呼びかける。がんばっていい営業になるよ。すばらしい本を売るよ。見ててね〉
『旅のラゴス』筒井康隆
〈この企画にあたり、いろんな人からオススメの本を聞いた。読んだ。感動した。ありがとう×2。でもポップに書くのは、最初から決まっていた気がする。そう、これ。ラゴスに行き着くための旅をした〉
『サンタクロースのせいにしよう』若竹七海
〈よその棚にならんでいるのを、未練たっぷりに眺めてきました。若竹さんの他社本はすべて。中でも、これが一番ツライ。このままつれてかえりたい。サンタクロースのせいにして〉
『ななつのこ』加納朋子
〈作者に宛てたファンレター、そこにちょこっと書き添えた身近な不思議。すると、返事が返ってきます。あざやかな解決のヒントと共に。誰もが夢見るとびきりのシチュエーションをこの一冊で!〉
『幻の特装本』ジョン・ダニング
〈あるはずのない特別の装丁本を求め、うずまく熱気、狂乱。そして悲劇。高校生の時に読み、本に関わる仕事をしようと心に決めた〉

どれも未読だなぁ。浅学を恥じる。
カレーライフ、なんて読みたいな。

位置: 3,050
自分の書いたものが優れたポップだとは、智紀も思っていなかった。もしも会議に乗せたらぜったい通らない失敗作だろう。本の内容をほとんど表していない上に独りよがりで不親切。わかっていても、あれ以上の書き方ができなかった。
自分を衝き動かした本の魅力を、スマートな言葉で飾りたくなかった。とても個人的な思いで、だから 懺悔 のようにもう一行足した。少しだけ計算も入れたのだ。けれどその計算にしても本を読んでほしい一念であって、そうなると 小 狡 さも本望だった。

スマートな言葉で飾るのが嫌だ病、若い頃はあるよね。
まだ自分のほうが大切なんだ。年取ると、自分より大切なものがたくさん出来るからね。陽明学みたいだな。純粋さが最強、と思ってしまう危険性。

本も面白いし本語りも面白い。いい本でした。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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