『岳物語』感想 子どもが就学前の今、読めた幸せ

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小学校に入って二、三カ月して私は風呂の中で、学校は面白いか、と聞いた。岳は眼をかがやかせ、うん学校も面白いなあ。だけど保育園の方が勉強がないだけ面白かったなあ。でも学校は本当みたいなサッカーができるから保育園よりいいよーというようなことを彼なりの価値観の中で元気よく言っていたのだ。

岳くんメチャかわいいですね。こんなこと眼を輝かせて言われたらたまらないね。
うちの長男もこういうところあって、あー抱きしめたいなーってなる。

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私は釣りを殆ど知らない。興味もなかったし、自分は「釣り」という行動に向かない人間だろう、と早くから決めていたからでもある。

自分もです。しかし敬愛する先輩から教わって、先日娘と二人で釣りに行ってきました。
あたくしは終始船酔いでしたが、娘は楽しそうでね。何より。

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おそらく彼は本を読んで自分で調べ、自分で何かを 憶える、ということを五年生にしてはじめて知ったようなのだ。この「岳シリーズ」で以前書いたことがあるが、彼には小学校就学前に一切家庭教育などをほどこさず、まっさら 生 のままで入学させる、ということを意図的にしたので、就学以前に文字書きをはじめとしていろいろな勉強をたたき込まれているクラスのほとんどの友達に入学式のときから大きく差をつけられてしまっていた。そのため三年生ぐらいまでカガミ文字を書く、というような具合で、そのためかどうか、彼はマンガ以外の本は一切読まない、という方針をかたくなにしていたのだ。
そういう男が自分で釣り方を調べ、釣れそうな場所を調べて仕とめてきてくれた鯰に私は思わず感動してしまった。

あたくしも入学まで字が読めなかったタイプの人間なので、すげー分かる。小学校の時すでにコンプレックスだったもんね。字が読めないの。

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そして夜遅くシャワーをあびてビールをのむときになると、川べりにいるだろう野田さんや岳たちのことをきまってすこしの間考えた。
おそらく岳はいまこの時、やつにとっては生まれて初めてのもっとも貴重な充実した毎日をすごしているのだろう、という確信があった。そうしてこのことをあいつは果して自分のこれからの人生にどのくらいの比重をもって記憶し、自分のものにしていくのだろうか、ということがぼんやり気になった。  小学校五年生ぐらいの頃というのは、いま体験していることを大人になるまでどのくらい 憶えているものなのだろうか、ということをこの頃よく考えることが多い。

ありますねー。頑張って遊園地だの温泉だの連れてっても、きっと覚えていないんだろうなっての。別にいいんだけどね。

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「そうだな、ぼくは魚釣りが好きだからできれば魚を釣る仕事をしたいな」と言った。 「そうか、魚を釣る仕事かあ……」
私はその返事が意味もなくおかしくなってしまって、岳と同じように笑いながら言った。
魚を釣る仕事、といったらまずは漁師ということになるが、そういうことは言わなかった。やつは今思っていることを素直に言っているんだな、と思った。自分の息子だけれど、しかしこいつはいい少年だな、と、私はそのときふいに思った。それからすこしビールの酔いが回ってきたのかな、と思った。

思っていることを素直に口に出せるって美徳よね。
ある年齢までは、少なくとも。

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これからは永い旅から帰ってくるたびに私はこの少年と一泊二日ぐらいの釣りに出かけることにしよう、とそのときすこし充実したような気持になりながらそう思った。どうしてそんなことを考えてすこし充実したような気持になったのか私にはよくわからなかった。しかしそのたびにこの少年はどんどん変っていくのだろうな、とも思った。

佐藤優さんの『先生と私』でも言ってたけど、旅行は人を大きくするよね。
あたくしも子どもたちにパパとの旅、それから一人旅、させたいな。

今読んだというのが大正解の本。
次読むときは、きっと子どもはおとなになって、回顧の気持ちで読むんだろうな。

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