『<新版>日本語の作文技術』感想1 一理ある、一リアル

実際、文章を作るときって感覚で書いてるんですよね。

「目的はただひとつ、読む側にとってわかりやすい文章をかくこと、これだけである」。修飾の順序、句読点のうちかた、助詞のつかい方など、ちゃんとした日本語を書くためには技術がいる。発売以来読み継がれてきた文章術のロングセラーを、文字を大きく読みやすくした新版。

もとは朝日新聞の編集委員だとか。なるほど、わかりやすい文章にわかりやすい解説です。

位置: 774
この章の検討結果を要約しよう。修飾語の語順には四つの原則があり、重要な順に並べるとそれは次の通りである。
❶節を先に、句をあとに。
❷長い修飾語ほど先に、短いほどあとに。
❸大状況・重要内容ほど先に。
❹親和度(なじみ)の強弱による配置転換。
この四つの原則のうち、とくに重要なのは最初の ❶ と ❷ の二つで、この二つの重要性はほとんど同等の比重とみてよい。 ❶ と ❷ のどちらを優先するかは、その文の情況で判断する。

修飾語の順番、結構いい加減に作ってたんですが、箇条書きにされると、なるほどそうかもしれません。「初夏の雨が萌える若葉に豊かな潤いを与えた」の修飾語の順番なんて、感覚で読んじゃってましたね。

位置: 987
誤解・曲解を防ぐための、すなわち「わかりやすい文章」のための重要な大原則は以上の二つだが、その他のテンについても考えてみよう。
テンというものの基本的な意味は、思想の最小単位を示すもの だと私は定義したい。

確かに、句読点がいたずらに乱用される文章は読みづらい。今は句読点も色んな使い方がありますからね。

位置: 1,460
漢字とカナの併用にこのような意味があることを理解すれば、どういうときに漢字を使い、どういうときに使うべきでないかは おのずと明らかであろう。たとえば「いま」とすべきか「今」とすべきかは、その置かれた状況によって異なる。前後に漢字がつづけば「いま」とすべきだし、ひらがなが続けば「今」とすべきである。

位置: 1,465
編集者のなかには、こういうとき統一したがる人がいる。「今」は漢字にすべきかカナにすべきか、などと悩んだ上に決めてしまうのは、愚かなことである。

あたくしも校正の仕事をしていましたが、どんな状況であれ「いま」は「今」と表記するように言われましたね。統一するのが愚か、というのも、なるほど、そうかもしれません。
「その結果いま腸内発酵が盛んになった」「陛下がほんの今おならをなさいました」、前後の文脈で変えるの、確かにありなんですよね。

位置: 1,501
漢字とカナの組み合わせによる文章となると、送りがなの問題にもふれざるをえない。しかし送りがなというものは、極論すれば各自の趣味の問題だと思う。ひとつの法則で規定しても無理が出てくる。ほとんど唯一の可能な法則化は、語尾変化可能な部分以下をすべて送りがなにすることだ。たとえば「終る」という単語は「おえる」とも変化する以上、「終わる」としなければならない。文の最後に出てくる「終」も「終わり」だ。反対に「すくない」は「すくな」までが語幹だから「少い」と書くと、「すくなくない」は「少くない」になる。これでは「すくない」のか「すくなくない」のかわかりにくい。文部省は四苦八苦して定めたものの、どうしても都合が悪くなって、これまで何度も改定してきた。新聞社はそのたびに右往左往させられ、今やいかなる記者といえども、校閲部の専門家以外に現行の規定を正確に守りうる者はいなくなった。送りがなは、規定すること自体がナンセンスなのだ。

送り仮名もそう。受付なのか受け付けなのか。どっちか決まってたなぁ。規定することがナンセンス、なるほど。そうかもしれません。

位置: 1,533
たとえばイギリス語のローマ字表記におけるtuと日本語のローマ字tu(ツ)とは発音が違う。これは日本語をヘボン式にしてtsuとしてみても、イギリス語式に発音すれば決して日本語の「ツ」にはなるまい。(だからこそ日本語は日本式〈訓令式〉ローマ字でなければならず、イギリス語式〈ヘボン式〉のごとき植民地型言語政策をとってはならない。)

ヘボン式を植民地型言語政策とする。なるほど、わかりやすいですね。だから「つ」はあくまで「tu」でいいのだ、ということか。訓令式のススメ。

しかし、このあたりからどんどん「言語保守おじさん」の顔が出てくるんですよ。七三のおじさんが怒りながら書いてるのが何となくわかる。

位置: 1,556
たとえばベトナム語の「ベトナム」(音声記号だと[vietnm])はベトナム語ローマ字表記だと六声のトーンも加わって Viêt-Namとなるが、これは決してイギリス語(ヘボン式)ローマ字表記の vietnam でもなければ日本語式ローマ字表記のvietnamでもない。ところが、これを「ヴィエトナム」とカナ書きする人がある。こういう人たちには、どちらかというと 衒学的(ペダンチック)な傾向が強いようだ。しかしヴィエトナム(すなわち日本式ローマ字だとvi-e-to-na-mu)と言ってみてもベトナム人には通じはしない。むしろヴェツナンとでも言った方がいい。どうせ通じないのなら、妙にコケおどしの衒学的表記などしないで、すでに慣例化した単純な「ベトナム」でいいではないか。

おじさんだなぁ。笑うしかない。

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