『はつ恋』 ツルゲーネフさん、読ませるね

古典だからって特別扱いはしませんが、読ませますね。

トゥルゲーネフは、生前、自分の全著作の中でこの作品を「いちばん愛していた」と語っていたという。帝政ロシアの農奴制が崩れ去ろうとする時代、その不安は作者を憂愁に満ちた過去の郷愁の世界に誘った。初恋の甘く切ないときめきが、主人公の回想で綴られる自伝的中編。

女の手練手管というか、男の嫌らしさというか、そういうものを感じさせる古典。確かに良く出来ていて読ませるんですよねー。

いつまで立っても女性にゃ敵わないってますが、ホント。

置: 128
青年たちはさも 嬉しそうに、てんでにおでこを差出す。一方少女の身振りには(わたしは横合いから見ていたのだが)、実になんとも言えず 魅惑的 な、 高飛車 な、 愛撫 するような、あざ笑うような、しかも 可愛らしい様子があったので、わたしは 驚きと嬉しさのあまり、あやうく声を立てんばかりになって、自分もあの 天女 のような指で、おでこをはじいてもらえさえしたら、その場で世界じゅうのものを投げ出してもかまわないと、そんな気がした。

この世のすべてを支配する少女。そういう可愛らしさは存在します。
あたくしも全てを投げ売ってでも、と思ったことが何度か。青かったな。ある程度歳を重ねてからでもそういう気持ちになれるかどうかというのは、人を選ぶと思いますが。少なくとも、今はもう、そういう激しい気持ちはないなー。

位置: 660
おお、めざまされた魂の、つつましい情感よ、その優しい 響きよ、そのめでたさと静もりよ。恋の初めての感動の、とろけるばかりの 悦びよ。―― 汝 らはそも、今いずこ、今いずこ?

私淑する森見登美彦氏の本に(たぶん『夜は短し』)こんな表現のパスティーシュがあったような。ロマンティックですが、幾分、現代で読むと過剰ですわね。

位置: 758
ジナイーダはすぐさま、わたしが彼女に恋していることを 見抜いたし、わたしの方でも、別にそれを 匿 そうとも思わなかった。彼女は、わたしの情熱を 面白 がって、わたしをからかったり、 甘やかしたり、いじめたりした。いったい、他人のために、その最大の喜びや、その底知れぬ悲しみの、 唯一無二 の源泉になったり、またはそれらの、絶対至上にして無責任な原因になったりするのは、快いものであるが、全く私は、ジナイーダの手にかかったが最後、まるでぐにゃぐにゃな 蠟 みたいなものだったのだ。

本当に。悪女にもてあそばれる快楽のようなものは、確かにある。
それがまた最低で甘美なんですよね。自分は結構手前でその快楽にブレーキかかってしまうタイプなんで、楽しみきれているとは言えないけど。

位置: 766
そうした男たちの胸に、あるいは希望を、あるいは不安を呼びおこしたり、こっちの気の向きよう一つで、彼らをきりきり舞いさせたりするのが(それを彼女は、人間のぶつけ合い、と呼んでいた)、彼女には面白くてならなかったのである。しかも男たちの方では、それに 抗議 を申し立てるどころか、喜んで彼女の言いなりになっていたのだ。

たまんないね。いわゆるサークルクラッシャーとか呼ばれる人はこれを楽しんでいるのかしら。さゆり2号さんとか。

位置: 770
潑剌 として美しい彼女という人間のなかには、 狡 さと 暢気 さ、 技巧 と 素朴、おとなしさとやんちゃさ、といったようなものが、一種特別な 魅力 ある混り合いをしていた。

魅力ある混り合い、ね。なかなかユニークな表現ですこと。

位置: 832
わたしの 欲しいのは、向うでこっちを 征服 してくれるような人。……でもね、そんな人にぶつかりっこはないわ、ありがたいことにね! わたし、誰の手にもひっかかりはしないわ、イイーだ」
「すると、決して恋をしないというわけですね」
「じゃ、あなたをどうするの? わたし、あなたを愛していなくって?」
そう言うと彼女は、 手袋 の先で、わたしの鼻をたたいた。  全くジナイーダは、さんざんわたしを 慰み物 にした。

うひょー、たまらん。
本当に、適当に悪い女ですよ。からかうのが好きなんだな。弄ぶことへの躊躇がない。いい悪い女だ。

位置: 1,445
マレーフスキイの顔は、かすかに引きつって、一瞬間ユダヤ人のような表情を帯びたが、すぐ高笑いにまぎらしてしまった。

ほんと、ユダヤ人嫌われもんね。

いや、しかし、このあと出てくる父親が実にたくましく嫌らしい。
こういう父にはなりたくないし、なれないけど、悪役として肉親として、素晴らしい存在感。父にして悪。何だかオイディプスみてーだ。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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