長い長い旅路の3合目くらい『汚れた赤を恋と呼ぶんだ』

この階段島シリーズ、長いんです。その3作目。現実に戻って話が始まります。
敵役・安達の登場。

位置: 154
ところで、出会ってすぐの僕が、彼女は魔女ではないと確信していたのには理由がある。僕はその三日ほど前に、すでに魔女に会っていたのだ。顔はみていない。あるいは、覚えていない。でも魔女と話した内容は、はっきり記憶している。そのときの声や口調で、安達とは別人だというのが瞭然だった。  つまりこの時点で僕は、すでに人格の一部を捨てていたのだ。
それでも魔女を捜していたのは、嘘ではない。

この「人格を捨てる」って話もね、かなりいい加減な話で。
文章じゃないから「ここからここまで」なんて言えないと思うんですよ、人格って。特に堀が魔女ならその辺は明確にするでしょう。でも、しない。やっぱり人格を捨てるときの線引きはあいまいです。

位置: 316
僕が魔女を捜している理由は、もちろん真辺由宇だ。彼女が魔女をみつけだしたいなら、好きにすればいい。彼女が自分の一部を捨て去りたいと思っているなら、それも、好きにすればいい。でも、もしも魔女を捜す過程に危険があるのなら、できるなら僕は先回りしてそれを取り除いておきたい。

このあたりではまだ、真辺に対する気持ちが鋭くないよね。あいまいに「守り」たがっています。しかし、この気持ちが次第に……

位置: 561
「私はきみが笑った理由を知らないといけないんだと思う。それで、私は変わらないといけないんだと思う。間違いは正す必要があるよ。だから、お願い。教えてほしい」
僕は全身から血の気が引くのを感じていた。手足や首筋の辺りが痺れるように冷えた。引いた血は心臓に集まり、そこだけが妙に熱くて、ずきんと痛む。それは二年前、真辺が感じた恐怖と同質のものかもしれない。
今、目の前で真辺は変わろうとしているのだ。自らそれを望んでいるのだ。僕が我儘に願っていた、いちばん傷ついて欲しくない彼女の部分が、僕のせいで傷つこうとしているのだ。

どうでもいいじゃん、そこまで人に気を使って生きるのは辛いよ。とおじさんなどは思ってしまいますが、そこは感受性が豊かすぎる人々の物語。どうにか納得できる形を探します。

位置: 1,530
「変わるのは、いけないことなの?」
「いけないわけがない。人はそれを、成長と呼ぶんだ」
本来なら、それは正しいことだ。考えるまでもなくわかることだ。
だから、これは懺悔だ。ほんの少しだけ言い回しを変えるなら、僕は真辺由宇が当たり前に成長することを受け入れられなかったんだ。それは明らかに歪んでいて、愚かで、恥ずかしいことで、だから。
「だから僕は、その感情を捨てた」

周りの人に「そのままでいて欲しい」と願うのはわがままで勝手です。とはいえ、その感情を魔女に頼らないと捨てられないほど大切にしている人というのはどうも想像がつかない。よほどの頑固。

位置: 1,559
「僕は本当に、君の変化を受け入れたいと思っているんだよ。一方で、君に変わって欲しくないとも思っている。簡単に君が変化してしまうとやっぱり寂しい。たぶん知らないと思うけれど、僕は君の色々なところが気に入っているんだ」
どうしようもなかった。真辺由宇が変わるなら、それは仕方のないことだ。わかっているのに僕は、これまでの彼女への執着を捨てられないでいる。
「嬉しいよ。私は七草に嫌われているんじゃないかと、ちょっと不安だったから」
「嫌いなところもたくさんある。嫌いなところも、気に入っている。思い返してみれば、僕がちゃんと嫌いになるのは、君くらいなんだ。僕を本当に苛立たせる部分であれ、君からなくなってしまうと、とても悲しいよ」

良い場面だな。全く男女のそれとは違う、告白。
でも、やっぱりちょっと、繊細過ぎるんだよな。絵空事のようにしか思えないところがあります。

位置: 2,580
僕は思わず微笑む。  これが真辺由宇の声だ。力強くて、切実で、鋭利で、脆い。ほかの誰より綺麗な、否定する理想主義者の声だ。 「ねぇ、七草。そんなことはどうでもいい。あとで考えるよ。小さな子がいなくなったなら、私は全力で捜す」

主人公が色々、理詰めやらなんやらで考えたものを、真辺が力いっぱいぶっ壊す。そういう関係を描くことを美しいとは思います。

位置: 3,085
泣き顔を笑顔にできなくても、コートで涙を拭けるなら、それを僕は幸せと呼ぶんだ。  愛する少女が傷ついたなら、臆病に傷痕をなでて、それを僕は恋と呼ぶんだ。

どんどんポエミーになる七草くん。ちょっとおじさん、ときどきついていけないよ。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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