延々とつづく『凶器は壊れた黒の叫び』

安達のジョーカー感好きだな。

新聞部の創設。柏原第二高校に転校してきた安達は、島で唯一の小学生・相原大地のために部活動を始めることを提唱する。賛成するクラスメイトたちだったが、七草はそれが堀を追い込むために巧妙に仕組まれた罠であることに気づく。繙かれる階段島の歴史と、堀が追い求めた夢。歩み続けた7年間。その果てに彼女が見つけた幸福と、不幸とは……。心を穿つ青春ミステリ、第4弾。

出来れば安達にはそのまま改心とか人間臭さとかないままでいて欲しい。悪魔のような人物で居続けて欲しい。それがあたくしのピストルスター。

位置: 107
もしも僕の目の前にいる、捨てられた大地が彼の「母親を嫌う感情」なのだとしたら、やはり最終的には消えてなくなるべきなのだろう。

根底にある「子どもは親を愛するべき」という強制感がピンときません。それを「是正されるべき」だと思っているのならなおさら。「親が嫌いな子どもがいたって仕方がない」というのがあたくしの考え方です。

位置: 325
がむしゃらにでも走れば、道ができる。その道を作るのが私の役割なのだ、と真辺は考えている。だから私は優しくなくてもいいんだ、とまで言ってしまうと無茶苦茶だけど、でも。本当に優しい人のとなりで、たとえば七草のとなりで愚かでいることが必要なのだ。

七草に対する信頼感。純粋すぎてもはや人間の領域を超えています。
あたくしはもう少し、人間臭い方が好きだな。とはいえ、これはあくまで捨てられた方の真辺。現実はもっと人間臭いんでしょうけどね。

位置: 2,182
こういう会議において、労力は説得材料になる。目に見えて働いていると、その人の意見は却下しづらい。安達は意外にまめな方法で外堀を埋めるようだ。

大体の場合、人の労力は無下に扱えない。チームワークに影響するからね。日本じゃ特にそうですよね。

位置: 2,442
問題という言葉が好きだ。障害を、問と題とで表しているところが好きだ。そこには解決を目指す意志がある。

こういう言葉遊び、著者は上手だよね。

位置: 2,772
僕が堀に出会ったのは、小学三年生の夏から秋にかけての土曜日だ。

え、なにそれ?という具合に急に出てきた衝撃の事実。後出しじゃんけんでは?

位置: 2,981
僕はもう父さんにも母さんにも会えないと思うと悲しくて寂しくて、独りきりの夜に泣いていた。

この物語は、大地の母子関係が結構重要なテーマになるくせに、七草や真辺の親についての記載がほとんどないんですよね。違和感があります。
まず自分はどうなんだよ?と思わないでもない。

位置: 3,125
堀がようやく、僕の胸から顔を離す。ぐしゃぐしゃの泣き顔を上げた。
「本当に? ルール違反じゃない?」
「本当に。ルール違反じゃない」
現実の方の僕がどう考えるのかわからないけれど、そんなの知ったことじゃない。
堀は両手で、ごしごしと顔をこする。それから普段の、鋭い目つきの無表情を取り戻して、僕を睨む。どうやら怒っているようだ。
「七草くんに、お願いがあります」
なんだか気おされて、僕は「はい」と頷く。
「いいですか? 私はけっこう泣き虫だし、すぐに混乱します。それに落ち込むと、ベッドに潜り込んで外に出ない癖があります」

ホリちゃん可愛い。
私の取説かよ。しかし可愛い。

位置: 3,136
堀はまだ、不機嫌そうに僕を睨んでいた。
「だから、お願いです。私がルール違反をしそうになったら、七草くんが叱ってください」
その夜、僕は堀について、いくつかのことを知った。
意外と泣き虫だということ、落ち込むとベッドから動かないこと、泣いたあとは恥ずかしがって不機嫌になること、そんなときは普段よりずっとはきはき喋ること。
なんだか楽しくて、笑ってしまう。
「わかった。君が階段島を作って、僕が君をチェックする」
こんな風に、僕たちの役割が決まった。

彼らなりのラブロマンス?なのかな。
でもいいですよね、こういうの。憧れちゃうな。

位置: 3,225
「たとえば、私がなにかを間違えたとき、恋人だからっていう理由で七草がその間違いを見逃すようなことがあっちゃいけないんだよ。私が間違えたなら、七草には叱って欲しい。七草が言っていることに納得できなければ、私は反論したい。そのときにあるべき感情は、恋でも愛でもない」
「じゃあ、なに?」
「言葉にするのが難しいな。でも、いちばんしっくりくるのは、尊敬かな。だから彼の恋人になるのは、嬉しいことではあるけれど、なんだかもったいない」
つまり、優先順位が違う。

一方の真辺。
これはこれで真辺らしくていい。二人の女の子が純粋化されすぎて、もはや記号化していると本作を読み終えたときに思いましたが、キャラがたっていてそれはそれでいいのかも。

位置: 3,417
「貴方は、どっちの七草くんなの?」
どちらでもある。でも、どちらかといえばやっぱり、去年の夏に階段島に来た方の僕なのだろう。僕にとって、いちばん綺麗なのは、今でもまだ真辺由宇だ。  だから、僕は答える。
「僕は堀の理想を守りたいと思っているよ。階段島の魔女は君しかいないし、君であって欲しい。そのためなら、どんなに苦しいことだってできる」
七年、堀と一緒に過ごした僕には、もう言えなくなってしまった言葉だ。この先もまだ堀を苦しめてでも、魔女としての彼女を守るための言葉だ。僕はやっぱり彼ではないから、魔女の味方でいられる。

位置: 3,423
堀はじっと僕をみた。濡れた瞳は純粋で、なんだか幼くみえる。  怖がっているような、震えた声で彼女は言った。
「貴方は、階段島が好きですか?」
僕は頷く。
「もちろん。君の魔法が、大好きだよ」
鞭打つような言葉だ。堀にこの島を、諦めさせないための言葉だ。
なのに、彼女は瞳に涙を溜めたまま、微笑んだ。
「なら、私は幸せです」  僕が堀に、それを言わせた。

位置: 3,580
僕は弱々しい黒でいよう。透明な黒でいよう。彼女の孤独な理想を抱きしめて、その光を遮らないまま、僕だって孤独な黒でいよう。
愛ではなくて、恋ではなくて。
まだ名前もないようなこの感情と一緒に、僕は彼女の隣から逃げ出さずにいよう。

ファンタジー要素がどんどん強くなっていって、正直、どんどんついていけなくなってる。魔法の存在が強くなりすぎると、あたくしは不安で読めなくなるんですね。なんだか、なんでもありやんって気持ちになる。我々の言葉は魔法がないことを前提に作られています。だから、魔法のある世界の言葉はあたくしには届かない。

むー。

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