『水車館の殺人』感想 犬神家メソッド

これはまさかのストレート。
最初に怪しいと思った人が本当に犯人だったやつ。

仮面の当主と孤独な美少女が住まう異形の館、水車館。1年前の嵐の夜を悪夢に変えた不可解な惨劇が、今年も繰り返されるのか? 密室から消失した男の謎、そして幻想画家・藤沼一成の遺作「幻影群像」を巡る恐るべき秘密とは……!?

『犬神家』を観ていれば「怪しい」と誰もが思うはず。
まさかそのままとは思いませんでしたが。

位置: 589
水車って云うと普通、童謡の『森の水車』とかね、ああいった可愛らしい感じのものを思い浮かべる人が多いけれども、違うんだなあ。僕にとってはやっぱり あれ なんですよね、福岡の 朝倉 にある重連水車群。初めてあれを見た時には感動したなあ。

これのことですね。確かにすごい。

位置: 626
古川恒仁。──一年前のあの嵐の夜、 忽然と部屋から姿を消した男。藤沼一成の絵を盗み、正木慎吾を殺害し、その死体を切り刻み、地下室の焼却炉で燃やし……そのままどこかへ逃走したと目されている男。

こいつは……きっと犯人じゃない。
探偵小説読みならすぐにピンと来る、あからさまに怪しいやつ。

位置: 719
「陰口を 叩くつもりはありませんけどね、極端な云い方をするなら、あの人は自意識と劣等感の化物ですよ。仕方ないと云えば仕方ない話だとは思いますが」

自分のことを言われている気がして仕方がない。自意識と劣等感。
これに今までも、そしてこれからも、どれだけ苦しめられるのか。

位置: 1,027
大石源造は、かつて一成の作品を多く扱っていたことのある美術商。森滋彦は、一成作品の芸術的価値をいち早く評価し、その名を広く世間に知らしめた美術研究者の息子。三田村則之は、十二年前の例の事故の際、紀一たちが運び込まれた病院の跡取りである。そんなわけだから、彼らが熱心にコンタクトを取ってきた時、紀一にしてもそうそう 無下 につっぱねることはできなかったのだ。

こいつら、みんな殺されるな、と読みながら思いましたね。

位置: 1,047
紀一が考えるに、藤沼一成は真の意味での〝幻視者〟だった。みずからの〝心の目〟が 捉えた幻想風景をそのままキャンバスに写し取ることによってのみ、彼の絵は成立していたと極論してみてもいいだろう。 だから ──。
最後に見たあの風景に、 それを写したあの絵に、 彼は戸惑い、 そして恐れたのだ。

これが最後に明らかに。いい伏線ですね。

いや、犯人はバレバレでしたが、トリックや絵の使い方は実に良かった。さすがの二作目。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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