いや、潔い。面白かった。
20年ぶりに読んだんですが、記憶違いをしていました。ずっとエラリーが犯人だと。
おかげ?でドキドキしながら読めました。
十角形の奇妙な館が建つ孤島・角島を大学ミステリ研の7人が訪れた。館を建てた建築家・中村青司は、半年前に炎上した青屋敷で焼死したという。やがて学生たちを襲う連続殺人。ミステリ史上最大級の、驚愕の結末が読者を待ち受ける!
あんまり史上最大級とか言わないほうがいいと思うんですけどね。
位置: 70
「僕にとって 推理小説 とは、あくまでも知的な遊びの一つなんだ。小説という形式を使った読者対名探偵の、あるいは読者対作者の、刺激的な論理の 遊び。それ以上でも以下でもない。
だから、一時期日本でもてはやされた〝社会派〟式のリアリズム 云々 は、もうまっぴらなわけさ。
あくまでミステリのためのミステリ。
その潔さ良しでしょう。実際、面白いわけだし。
とはいえ松本清張や横溝正史も好きですけどね。
位置: 95
「それでだねルルウ、ミステリが、ミステリ独自のある方法論によって成り立つ、知的遊戯のための一世界であると考えるならば、僕らの生きる現代はきわめてその構築が難しい時代だという話になる」
ガストン・ルルー。
未読だったので今読んでいます『黄色い部屋の謎』。やや冗長。
しかし監視カメラや携帯電話はたしかに古き良き探偵小説には邪魔ですね。
しかし現代だってミステリはある。しっかりとね。
エラリィはそういうところ、反省したほうがいい。死んでるけど。
位置: 835
看板に飾り文字で記された〈MOTHER GOOSE〉というその店の名を読み取って、江南は思わず頰を緩めずにはいられなかった。
どういうこと?と思いググりました。
『そして誰もいなくなった』『僧正殺人事件』をはじめとする、マザーグースを題材にしたミステリが沢山あることから、ってことですね。いわゆる見立て殺人ってやつ。あたくしも大好き。横溝正史も拝借してますよね。悪魔の手毬唄とか。
位置: 1,557
「守須君か。彼も、なかなかいい名前だな」
なるほど、いま読み返せばここも伏線、というか一つの引掛けですね。
位置: 2,703
「そうだよ。あの日──九月十九日の午後、私は確かに、島田、お前の云うとおり、兄から送られてきた小包みを受け取った。中には血まみれの左手が、ビニール袋に密封されて入っていた。その手の、薬指に 嵌 まっていた指輪に見憶えがあった。私はすぐに事態を了解した。
指とか手とか、すぐ切り落としがちね。
しかし、ここはグッと来るシーンでした。
位置: 2,997
「『最後の被害者』『探偵』『殺人犯人』……か」
ホールに戻って自分のコーヒーを淹れながら、エラリイは独りごちた。それから、無言を守るポウとヴァンを交互に見やり、 「残ったこの中に『殺人犯人』がいるとして、まさか今から名乗り出る気はないだろうね」
いるわけないね。
しかし、こういう狂気じみたものを、実際その場で楽しむ犯人、やばい心理だね。
いかれてんなぁ。
位置: 3,166
「まず、ヴァンだ。お前は確か中学の頃、強盗に両親を殺されたんだったな。妹も一緒にだったか。だからお前にとっちゃあ、人殺しをネタにして喜んでる俺たちみたいな学生は、たいそう腹の立つ存在なんじゃないのか」
ここに来て重大事実。
ま、本筋にはそれほど関係ないんだけどね。
しかしそんなこと、平常時だったら口が裂けても言えないよね。
位置: 3,654
「ほほう。大家の名ですな。守須君はじゃあ、モーリス・ルブランあたりですか」
警部は調子に乗って尋ねた。
守須はわずかに眉を動かしながら、「いいえ」と呟いた。それから、口許にふっと寂しげな微笑を浮かべたかと思うと、やや目を伏せ気味にして声を落とした。
このあとの一行のために本著は書かれているわけだ。しびれる。
位置: 3,831
体調が良くなかったのは、前の日からずっと水を絶っていたせいである。後の計画のため、この 水絶ち はどうしても必要なことだった。
そうか?と思わないでもないけど。
位置: 3,877
(あのプレートは、いったい何だったんだろう)
「被害者」になるということの意味を、彼らに思い知らせてやりたかったのか。あるいは、あらかじめ〝刑〟の宣告をしておかねばアンフェアだという、妙な義務感に囚われたのか。それとも、もっと違うレベルでの、彼らに対する痛烈な皮肉のつもりだったのだろうか。
恐らくはそれらすべてを包含した、自分の屈折した心理の所産が あれ だったのだ、と思う。
用意周到なわりに屈折には素直。やっぱりいかれてる。
しかし事件を面白くしているのは間違いない。
傑作。
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