伊瀬勝良著『キャッチャー・イン・ザ・トイレット!』感想 いいビルディングスロマンである

が、いささかロマン主義的過ぎやしないかという気もする。

web上で絶賛を浴びた青春小説「オナニーマスター黒沢」が、大幅な加筆修正を経て蘇る。中学二年生の黒沢には、絶対人に言えない秘密があった。それは学校の女子トイレで同級生をオカズに自慰にふけること。しかしクラスでイジメに遭っている少女に気づかれてしまい……あの頃のモヤモヤと切なさが胸に迫る傑作!

あの時代をそのままzipした感じがあって、とても良かったですね。吉野家テンプレとかハルヒとか、あの時代にその界隈に出入りしてたら必ず知ってた単語が、我々にあの時代の空気を再度吸わせてくれる。

皮肉なタイトル「オナニーマスター黒沢」からの改題、仕方がないのかもしれないけど、残念ではある。

第19発 瞼の裏の世界で

位置: 2,449
気がつくと、滝川は生まれたままの姿で僕の前に立っていた。 「ダメだな、僕は……」
滝川の光を当てれば透けそうな白い肌がまぶしくて、僕は両手で顔を覆った。 「本物のきみの前じゃ、恋愛小説に出てくるような恋の相手にはなれなかったのに……」
指と指の隙間が濡れている。
「こんなことばかり得意だ……」
ここでなら、きみが望む恋の相手にだってなれるのに。

人間、センチになるときくらいある。

第21発 転落劇

位置: 2,851
さらし者にされて、つらくないと言えば嘘になる。罪を自白したその日から、心安らぐ日などなかった。
だけど逃げ出そうとは思わない。
罪を 贖い、透明人間の自分を捨て、オナニーマスター黒沢の 烙印 を押されたまま生きていく。それこそが僕の選んだ道だ。

悲劇のヒロイン症候群というか、自己憐憫の塊かもしれない。しかし、その態度は評価すべきだと思う。

第22発 彼女が消えるまで

位置: 3,084
「でもね、キョンくんが言うんだよ」
「長岡が……?」
「うん。いつまでもこのままではいけません、今度はわたくしたちが変わる番ですぞ、ってさ。お説教されちゃった」
長岡が滝川を熱く説得する様が目に浮かぶようだった。僕を許すばかりか滝川の決意の後押しまでしてくれていたなんて、つくづくあいつはお人好しだ。

キョン……最高のバディ。
こっちのキョンにも、わたしはなりたい。

最終発 きみといっしょ

位置: 3,264
彼女のことは、半年前に終わった僕の中学生活の、唯一の心残りだった。心残りはきっちり清算しておく必要がある。
後始末は完璧に。それが僕のジャスティスだからだ。

かっこつけやがって。

位置: 3,472
「……ううん、なんでもない。その女の子とうまくいくといいね」
そう言うと、北原は立ち止まっている僕を追い越してすたすたと先に歩いていった。
追いついて「さっきのはなんだったんだよ」と尋ねると、北原は「黒沢くんって想像で物を言うとこあるよね」とよくわからない返事をして、それ以上なにも教えてくれなかった。

北原ちゃん、意味深だよ。
これ、どう解釈すりゃいいんだ?

誰か教えて。


まとめ

ネットに落ちてる感想を色々読んだけど

あたくしは結構好きです、このエンディング。いろんな解釈や感想を持つ人がいるのは作品のいいところだし、毀誉褒貶が同じ箇所についてあるのは名作の条件なので。

そのうち、子どもたちにも紹介したい……かな。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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