アンデシュ・ハンセン著『スマホ脳』感想 結論ありき感はある

たぶん書いてる人も読んでる人も、結論ありきなんだろうなという印象。

平均で一日四時間、若者の二割は七時間も使うスマホ。だがスティーブ・ジョブズを筆頭に、IT業界のトップはわが子にデジタル・デバイスを与えないという。なぜか? 睡眠障害、うつ、記憶力や集中力、学力の低下、依存――最新研究が明らかにするのはスマホの便利さに溺れているうちにあなたの脳が確実に蝕まれていく現実だ。教育大国スウェーデンを震撼させ、社会現象となった世界的ベストセラーがついに日本上陸。

感情が先に出てる。こういうタイトルの本は好きじゃない傾向がある。そして読んだらやっぱりそうだった部分もありました。

また、邦題も「売れるために」つけてるよね。内容について直接的な要約じゃない。部分だけ切り取って恣意的につけてる印象。長い目で見ると読者に不親切なこういうやり方は、やっぱり好きじゃない。

そして、基本的に文献などの参照が書かれていない。ま、結論ありきの本でしょう。

第1章 人類はスマホなしで歴史を作ってきた

位置: 371
食べたり飲んだり、眠ったり交尾したりは先延ばしにできるが、脅威への対処は先延ばしにできない。強いストレスや心配事があると、それ以外のことを考えられなくなるのはこれが原因だ。

生存の上で有利だったから人類はそういう傾向のある人が生き残っている、って話。

位置: 374
そもそも、普通の人は負の感情のほうがずっと気になる。争いや修羅場のない映画や小説を読みたい人なんているだろうか。

いるんだな、日常系アニメの存在を知らんのか。

第3章 スマホは私たちの最新のドラッグである

位置: 703
不確かなものより、確かなものを好むべきでは? なぜ脳は不確かな結果のほうに多くのドーパミン報酬を与えるのだろうか。その答えに100%の確証はないが、最も信憑性が高い説明はこうだ。
「ドーパミンの最重要課題は、人間に行動する動機を与えることだから」

確かに、スロットなどが好きな人は不確実性による動機づけを求めているように思えますね。
それがドーパミンのせいなのか。

位置: 714
人間に組み込まれた不確かな結果への偏愛。現代ではそれが問題を引き起こしている。例えば、スロットマシーンやカジノテーブルから離れられなくなる。

スマホでいうところのガチャだ。

結構色んな人がガチャ引いてるらしいね。あたくしは全く興味ないけど。スマホゲー基本やらないしね。

位置: 734
「『いいね』が1個ついたかも? 見てみよう」と思うのは、「ポーカーをもう1ゲームだけ、次こそは勝てるはず」と同じメカニズムなのだ。

あたくしもe-football、あと一試合あと一試合といって延々やってますからね。餌食だな。ただ、ポーカーとかお金をかけるのは好きじゃない。そこに存在意義を見出していない。

位置: 792
もともとは生き残り戦略だったはずの脳のメカニズムのせいで、人間はデジタルのごほうびに次々と飛びつく。

メタ認知する助けになるよね。こういう文章。たしかにスマホは集中の邪魔だったりしますから。時間泥棒だし。

第4章 集中力こそ現代社会の貴重品

位置: 961
つまり、集中力を完全に回復させ、読んでいた箇所に戻るのには 切替時間 が必要なのだ。勉強中にメールやチャットに返信すると、読んでいる内容を覚えるのに時間がかかってしまう。スマホに費やした時間を差し引いてもだ。仕事や試験勉強でマルチタスクをしようとする人は、別の言いかたをすれば、二重に自分を騙しているのだ。理解が悪くなる上に、時間もかかる。チャットやメールをチェックするのは、例えば1時間に数分と決めてしまい、常にチェックしないのがいい方法かもしれない。

間違いないね。このあたりの付き合い方を考えないと。
次の世代にもね。

第6章 SNS 現代最強の「インフルエンサー」

位置: 1,203
比較は喜びを奪う。 ──セオドア・ルーズベルト(米国元大統領)

至言だな。さすが資本主義の盟主。そのとおりだよ。

位置: 1,216
私たちが生き延びるのを助けたのは、食べ物とゴシップだった。
噂話というのは誰かについての情報を得るだけでなく、反社会的な振舞いや誰かがちゃっかりタダ乗りをするのを抑止する効果もある。

確かに、あたくしのように嫌われる勇気がない人間は、ゴシップが飛び交う場所が居心地が悪い。次は自分だと思うからね。なるほどね。

位置: 1,287
2000人近くのアメリカ人を調査したところ、SNSを熱心に利用している人たちのほうが孤独を感じていることがわかった。この人たちが実際に孤独かどうかは別問題だ。

このあたりもソースを出してほしいところではあるけれども、ま、そうかもしれないね、とは思うね。SNS触らないとつながっている気がしない、というのは現代病であることは間違いない。

SNSというのが比較しやすいメディア、比較してしまいやすいメディアではあるものね。

位置: 1,340
精神科医の私が治療してきた何千人ものうつ症状の人にまさしくこのパターンが見られる。これまでの経験から、うつには主に2種類あると気づいた。職場や人間関係など、長期のストレスに起因するもの。それから、社会的な地位を失ったことに起因するもの。クビになったりパートナーに捨てられたりした場合だ。

仕事をする、ってのは金以上に意味があるのかもしれませんね。
自分の存在意義の確認が出来るという点で。明確に「人の役に立っている」という自負は、健やかな精神状態のためには不可欠なんでしょうね。

第8章 運動というスマートな対抗

位置: 1,964
多くの人がストレスを受け、集中できず、デジタルな情報の洪水に溺れそうになっている今、運動はスマートな対抗策だ。 最善の方法 と言ってもいいかもしれない。

結果、筋トレという。ありがちな結論だが、一定の効果はあります。
確かに、あれ、メンタルにも効く。手っ取り早く。

位置: 2,015
脳の大部分はサバンナでの日々から変わっていないわけだから、身体を動かすことであなたや私の集中力は高まる。

安易にこの手の「所詮僕らアニマル」論に賛成は出来ないけど、まぁ、言うことは分かる。体感的にもね。

第9章 脳はスマホに適応するのか?

位置: 2,265
選択圧 という作用がある。動物が、環境下で生存率を高められる特質を獲得することだ。雪に覆われた景色に溶け込めるよう白いシロクマを創ったのも選択圧だし、アルプスの急な斜面でバランスを保てるよう石を完璧につかめる蹄をもった山羊を創ったのも選択圧だ。しかし、幸せな気分のホモ・サピエンスを生み出す選択圧はこれまで存在しなかった。その理由は簡単で、そういう人間が生き延びる勝算が高くなかったからだ。

不安さが、種の保存に役立ってきた。そしてスマホは、その不安さを利用する。これ、共依存的な、相性バッチリなやつじゃん。そりゃ、我々はスマホを手放せないよね。

納得。

第10章 おわりに

位置: 2,328
だが、ひとつ大事なことがある。「石器時代と同じものを食べて健康になろう」とか「石器時代みたいな暮らしで幸せになろう」といった記事の見出しを、あなたもきっと目にしたことがあるはずだ。こういう見出しは種の起源に調和した暮らし方のほうが人間にとって自然なのだというイメージを与えてしまう。だからそのほうがいいはずだと。だが、自然に近いほうがいいと思うのは思考の罠で、よくそういう誤解が生まれるため 自然主義的誤謬(naturalistic fallacy)という名前がついているほどだ。私たちの祖先がそんなふうに暮らしていたからといって、それが必然的によいという意味ではない。先祖たちは手に入るものを食べていただけで、それが健康的だという確証はない。祖先にとっても、私たちにとっても。
自然でないことはたくさんある。例えば、避妊具がいい例だ。セックスが妊娠につながるのは自然な現象だが、現代の私たちは避妊具を用いて妊娠を予防することができる。深刻な不整脈で亡くなるのも自然なことだが、今はペースメーカーがそれを予防してくれる。視力が悪い人は常に靄のかかった中で生きるのが自然な状態だが、今は眼鏡でそれを改善することができる。単純に進化の見地から「自然」 かどうかをはかっても、それが良いとも悪いとも言えないのだ。

示唆に富んでますね。自然派は跳梁跋扈してますからね。
自然主義的誤謬、naturalistic fallacy、いい言葉だ。

やはり、適切な距離を保って、テキトーに生きていく。これが大切な気がしますね。
君主危うきに近寄らず、ってことかな。

The following two tabs change content below.
都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする