『ノルウェイの森』は春樹作品の中でも納得いく

村上春樹との相性が悪いんでね。

すぐ「どういう意味か」と意味を探してしまう。ダメなんです。相性が悪い。そんな春樹作品ですが、ノルウェイの森は読めた。結構面白く読めました。

p20
「その手のことって私にはすごくよくわかるの。理屈とかそんな のじゃなくて、ただ感じるのね。たとえば今こうしてあなたにしっかりとくっついているとね、 私ちっとも怖くないの。どんな悪いものも暗いものも私を誘おうとはしないのよ」

どうしようもなく村上春樹の女性。どうして理屈とかを度外視したがるのかな。理屈は手ごろなコミュニケーションの道具だと思うんですが。すっとばしがち。

p21
もちろん直子は知っていたのだ。僕の中で彼女に関する記憶 がいつか薄らいでいくであろうということを。だからこそ彼女は僕に向って訴えかけねばならな かったのだ。「私のことをいつまでも忘れないで。私が存在していたことを覚えていて」と。 「そう考えると僕はたまらなく哀しい。何故なら直子は僕のことを愛してさえいなかったからだ。

最後まで読んでも、どうして「直子は主人公のことを愛していなかった」と思えるのかわからない。愛してなかったのかしら。愛するってナンダ?

寮の部屋割は原則として一、二年生が二人部屋、三、四年生が一人部屋ということになってい た。二人部屋は六畳間をもう少し細長くしたくらいの広さで、つきあたりの壁にアルミ枠の窓がついていて、窓の前に背中あわせに勉強できるように机と椅子がセットされている。入口の左手 に鉄製の二段ベッドがある。家具はどれも極端なくらい簡潔でがっしりとしたものだった。

(中略)

 男ばかりの部屋だから大体はおそろしく汚ない。ごみ箱の底にはかびのはえたみかんの皮がへばりついているし、灰皿がわりの空缶には吸殻が十センチもつもっていて、それがくすぶるとコ ーヒーかビールかそんなものをかけて消すものだから、むっとするすえた匂いを放っている。

学生時代の寮を思い出します。あのとき寮生活をしておいて本当に良かった。親元を離れなければ学べないことがたくさんあります。

p31
毎朝六時に「君が代」を目覚し時計がわりにして彼は起床した。あのこれみよがしの仰々しい 国旗掲揚式もまるっきり役に立たないというわけではないのだ。そして服を着て洗面所に行って 日 顔を洗う。顔を洗うのにすごく長い時間がかかる。歯を一本一本取り外して洗っているんじゃな
いかという気がするくらいだ。部屋に戻ってくるとパンパンと音を立ててタオルのしわをきちんとのばしてスチームの上にかけて乾かし、歯ブラシと石鹸を棚に戻す。それからラジオをつけて ラジオ体操を始める。

この突撃隊の神経質な感じ、笑っちゃうんですよね。解釈を交えずにルーチンでその人間を描くというのは乱暴でもあり効果的でもあり。テンプレを押し付けることになりかねないので多用は出来ないと思いますが。コミック的な人物になるけど、面白い。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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