大人って、そういうことだったのか『夜空の呪いに色はない』 2

トクメ先生の話は最高でしたが、それ以外の部分はどんどん理解しづらくなっていくんです。

位置: 2,991
彼の予感は、当たっている。
先輩との出来事は、魔女の世界にかかった呪いのようなものだ。呪いのすべてではないけれど、でもその象徴のようなものだ。 「相 原 美 絵」と、時任は答えた。それが、魔法で愛情を奪われた女性の名前だ。相原 大地 の、母親の名前だ。恋人が死に、愛情を捨てたとき、彼女はすでに妊娠していた。

意外なところで話がつながる感じは嫌いじゃないんですけどね。
とはいえ、最後まで読んでもここんところの話はそれほど大切に語られません。もう少し丁寧に扱っても良かったかな、と思わないでもない。

位置: 3,151
安達は乱暴な動作で、背もたれに身体を預ける。 「正しい答えがあるような問題なら、まず間違いなく専門家がいるんだよ。ある数式の証明だとか、薬品の効果の有無だとか、そういうのを多数決で決めようってことにはならないでしょ。立場によって答えが違う、考え方で価値が正反対になるような問題でしか、多数決なんて発想は生まれない。だから多数決で探しているのは正解じゃなくて、言い訳なんだよ。それで出した答えで困っちゃう人がいても、私のせいじゃない、みんなで選んだんだから仕方がないって言いたいだけなんだよ」

多数決に関する評価。探しているものは正解ではなくて言い訳。
なんでもそうです。組織だってそうだ。誰か一人に責任を押し付けないために、合議だの会議だの、延々とやる。
こういう見立てというか、言い切りというか、強い言葉のチョイスが本著は絶妙だよね。感心します。

位置: 3,342
「結婚しないの?」
と真辺は言った。
そんなことを彼女に尋ねられるのも、新鮮だ。
「イメージできないな。でも、仕事ができる人がいてくれると安心だな。僕の収入なんかおまけみたいなもので、私が養ってあげる、くらいのことを言われたいな。代わりに僕は家事で貢献したい」
「それもけっこう、たいへんかもしれないよ?」
「たいへんなのは、別にいいんだよ。早く起きないといけないのも、休みがないのも、きっと我慢できるよ。なにか失敗しても、目の前のひとりにしか迷惑をかけないのがいいんだよ。親しい人に謝れば済む、小さな責任だけで生きていたい」

こういう七草くん、きらいじゃない。
てか、あたくしか?!と思う。わりと本気であたくしが考えていることと被るし。

いま、そういう人間は多いのかもしれないですね。
「小さな責任だけで生きていたい」なんて、卑屈かもしれないけど良い言葉だな。

位置: 3,396
「魔女になったらまず、きみの寮とうちの寮を 繫 げて、部屋を隣にしよっかな」
ずいぶん私的な発想だ。
「君はもっと、公共のために魔法を使うんだと思ってたよ」
「そうかな。でも、ずっと考えてたんだけど、考えれば考えるほど、そのふたつに違いなんてないんじゃないかって気がしてきたんだよ」
「ふたつ?」
「だれかのためと、自分のため」
なるほど。階段島の真辺由宇も、変化しているようだ。

真辺がみせるあどけなさって、時々めちゃ可愛いんですよね。
堀の泣き顔の描写も。ギャップにうまくやられてる。

位置: 3,476
「同じ場所で一緒に生きてるのに、なのになんの影響も受けたくないなんて言うのも、充分に勝手だよ。独りきりで幸せになれるつもりなの? 誰にも頼らず、なんでも解決できると思ってるの? もし本当にそうだったとして、それを信じていることがもう、けっきょく身勝手なんだよ」

位置: 3,497
階段島じゃなくて、国でも星でもなくて、宇宙全部のルールで、無関心より関心の方が優先されるんだよ

自己責任や個人主義に対する暴力的な反論ですかね。同調できる部分もあり、そうじゃない部分もあり。

でも、そういわれるとすっきりもする。確かに、無関心より関心が優先される。そういうルールはある気がします。書いてないけど。

位置: 3,502
「それだって。私たちは相手を理解しないと、思いやることもできないんだよ。だからやっぱり、人間関係は、繫がることが前提なんだよ」
「それを補うのが、想像力でしょ。乱暴に他人に踏み込む前に、相手がどう思うのか想像しなよ」
真辺が首を傾げる。
「嫌だよ。そんな、不確かな方法。勝手に近づくよりも、勝手に離れる方が危険なんだと思う。みんなが無関心で、黙り込んでて解決する問題なんかない。それは想像力の遣い方を間違えてるよ」

真辺は良いね。憧れるよ、あたくしも。

勝手に離れるくらいなら、勝手に近づく。そうやってトラブルを起こし、また火をつけて回る。「それは想像力の使い方を間違えている」ってキラーフレーズだな。

ファンタジー小説というよりは哲学書を読んでいる気がするよ。

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