『忍ぶ川』感想 自意識が邪魔をしすぎている 2

今じゃ大学を出るくらいなんてことないですがね。当時はエリートの象徴だったんでしょうね。

  • 帰郷

位置: 1,301
私は、 顔馴染みなのだからたまには腰を落ちつけて、打ち明け話でもしたいような気持になることもあったが、それでは彼の勉強の邪魔になるかもしれないし、私たちのようなかたくなな驢馬は互いに名乗りあわないのが礼儀なような気もして、あっさりわかれてきたのである。

位置: 1,393
ああして歴とした店を持ち、夫婦ちからをあわせていても、櫟書房は都落ちせねばならなかったのである。まして私たちのように、すこしは収入の望めそうな店もなく、とぼしい妻の内職にたよりきっている生活は、この先、どんな手ひどい 破綻 をひそめているかしれない。

足繁く通う古本屋に対する気持ち。
確かに、頑ななロバは名乗りあって馴れ合わないほうがいいですね。
しかし、このヒモ男、どうしようもないね。学歴や自意識が邪魔をしすぎてどうにもならぬ。

位置: 1,470
私と妻とは、まず小夜子のことから相談したが、ともかく小夜子をアンクル・カツからつれ 戻すことに意見が一致した。

アンクル・カツという店名。カロリー高いね。
しかし人のことかまっている場合かね、この人は。芥川賞取るからいいのか。

位置: 1,518
「こんなことは、年が明ける前にいってしまった方がいいと思うからいうんだけど、僕ね、あんた達みんなに一つお願いがあるんだよ。というのは、あんた達、働きに出るのはいいけれども、出る前に僕に一と言、相談してみてくれないかな。

誰の稼ぎで食ってんだ、って言いたくなるよね。

位置: 1,529
「相談といってもさ、 義兄 さんに相談したって、わかってくれないからな。働かない人に相談したって、わかるはずがないからな。俺んた、おなじ働いてる人にでないと、安心して相談できないんせ。」
そういう要の顔には、さげすみの色も、反抗の気配も、あざけりの笑いもなかった。

よく言った。
要の顔に悪意がないのもいい。
しかし、この「働かざる者食うべからず」論はいつまで続くかね。頭では「労働は悪」だと思うんだが、働かずに食わせてもらっている男をみると腹が立つ。なぜだ。

位置: 1,541
私は、なによりも彼等の心のなかで、『 俺 んた、働くもの』と『働かない人、義兄さん』とが、はっきりと別世界に住むものとして区別されていることに気がついて、 暗澹 とした。それほど、私の非生産的な生活は、彼等の目には奇異なものに映るのである。私は、彼等の 義兄 であっても、彼等の仲間ではなかったことを自認して、やりきれないようなさみしさを感じた。

ほんと、コメディだよ。自覚ないんだからね、ヒモの。
暗澹(あんたん)なんて難しい言葉使っている場合じゃないよ、カミさんにアイスの容器作らせて食わせてもらっているんだし。働けよ!ってね。

  • 団欒

位置: 2,004
樋口は彼女とわかれたあと、小学教師とときどき会っていたようですが、それも夏のうちだけで、教師が学校のある郷里へ帰ってゆくと、それきりになってしまったようです。その後、樋口は彼の郷里で結婚して、いま最年少の市会議員になっています。

こういう上手く世間を渡れるやつ、いるよなー。

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