『合本 東京落語地図 (朝日文庫) 』は落語ファンじゃないと面白くない

朝日新聞らしい、天声人語的な語り口。

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古典落語は繰り返し聴くほどに味わい深いものになってゆく。『目黒のさんま』『芝浜』『黄金餅』『饅頭こわい』など126編の名作の聴きどころを紹介するとともに、江戸・東京を舞台にした落語ゆかりの地をたずね、言葉、風俗、習慣など失われた江戸情緒を再発見するための格好の入門書。

入門書、ってぇますが、結構マニアックですよ。話を知らないと面白くないしね。だからどちらかというとファン向け。マニアとは言わなくても、ファンじゃないと楽しめない。

だって書いてある内容は相当マニアックなんですもん。

p26
史跡玄治店の碑と横道一本へだてた人形町三ノ九、次田株式会社東京支店ビルの前庭に「寄席人形町末広跡」と刻まれた石碑がある。
末広は都内最古ののれんを誇った寄席で、客席は六十二畳の畳敷き。慶応二年の建築届があっ た。しかし、界わいは問屋街で昼間人口と夜間人口の差が極端に大きくなり、夜は昼間の活気が 嘘のように寂しくなった。せっかく開通した地下鉄も地元の人をよその盛り場へ運ぶ結果になっ た。昭和四十五年一月二十日の夜席を最後についに廃業。この夜だけは名残を惜しむ客で満員に なった。とりは「おばあさん」の五代目古今亭今輔(昭和五十一年没)。シャンシャンシャンの 手じめで、百年つづいた寄席の灯は消えた。

人形町末広、行ってみたかった寄席の最右翼ですよ。
石碑があるとは知らなかった。

p80
地図研究家の俵元昭さんは以前、おかめ団子について調べ、「赤坂・青山・六本木」というコ ミュニティー誌に連載した。以下ほとんどその請け売り。 三河から徳川家康について江戸へ出てきた人足小頭(一説には水野家浪人)の諏訪治郎太夫が、 品川沖で珍しい亀を釣り上げた。浦島太郎の亀みたいに尾が髪の毛のようにふさふさしていて、 小さな耳まである。亀を見にくる大勢の人をただ帰すのはもったいないと、治郎太夫の妻が団子 売りを思いついた。人呼んで「亀団子」。治郎太夫夫婦は団子でもうけて裕福になり、女房の実 家の神奈川在に隠居した。 三河屋平八という者がこの店を譲り受けた。この平八の女房が、いわゆる「おかめ」顔。で、 宝暦のはじめころ(一七五一~)、「亀団子」改め「おかめ団子」に。

おかめ団子、といえば『黄金餅』とずばり『おかめ団子』、後者は圓太郎師匠のしか聞いたこと無いけど。

こういう深い話を掘り下げてくれる、なかなか楽しい書です。

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