『エンダーのゲーム』感想 3 SFの戦闘シーンって難しいね

SFの戦闘シーンは読者を選ぶように思いました。
ガンダムとか好きだけど、活字で戦闘シーンを読むのは難しい。

位置: 289
自室へもどると、彼はベッドに横になっておののいた。ぼくはなにをやってるんだ? 一回目の練習セッションがおわって、早くもぼくは部下たちに強権をふるっている。ボンソーがやったように。そしてピーターのように。やたらとみんなをふりまわしている。かわいそうに年端もいかないチビを選びだして、ほかの全員の憎しみのはけ口をあたえているんだ。吐き気がする。どれもこれも自分が嫌いな指揮官そのものなのに、ぼくはそれをやっている。
人は本質的に、それがどんなものだったにせよ、自分にとってはじめての指揮官のようになってしまうという法則でもあるのだろうか? もしそうなら、ぼくはいますぐ辞めてもいい。

スタンフォード監獄実験のようですね。
あたくしも父親になって、自分の父親の嫌いなところが己に在ることを確認して、ゲロ吐きました。そうなんですよ、役割が人を変えるんですな。
大学4年生が新入社員になった途端に幼くなる、あれですね。

位置: 321
あらゆる面で、きみをより優れた兵士にするために、ぼくはきみを傷つけている。きみの才知を研ぎ澄ますために。きみがいま以上に努力するように。いつも安定とは無縁に、つぎになにが起きるかわからない状態にしておけば、どんなときにもとっさの判断ができ、たとえどんなことがあってもかならず勝つと心に決めているだろう。

人類のために犠牲になってくれ、ってやつだな。
これを言われる栄誉と、言われた絶望と。大義のためなら人間は残酷になれるわけですよ。

位置: 575
そしてエンダーは、このおまけの十五分が小隊リーダーたちから発表されることを良しとした。寛大さは小隊リーダーから来て、厳しさは指揮官から来ることを少年たちに学ばせるのだ――そうすれば彼らは、この布地の小さな固い結び目となってより強く結びつくだろう。

エンダーは本当にリーダーとしての素質が在る。寛大さは小隊リーダーから、厳しさは指揮官から。それが組織が上手くいくコツなんでしょうね。

位置: 599
小隊リーダーたちはすぐに訓練を開始し、エンダーはひとつのグループからべつのグループに移動して、助言したり、個別の問題をかかえた兵士に手を貸したりした。兵士たちにはいまではわかっているのだが、エンダーはグループを相手にすると容赦ないしゃべり方をすることもあるが、個人個人に対してはつねに忍耐強く、必要なら何度でも説明するし、穏やかに提案したり、質問や問題点や釈明を聞いてくれる。けれども、軽口をたたきあおうとしてもエンダーはぜったいに笑ったりしないので、兵士たちはやがてそんなことをしようとしなくなった。

距離感がうまいんだ、エンダーは。やれちゃうんだ、リーダーを。
それを損だとは思っていても。すごいことですよ。

そして良いリーダーは軽口を叩かない。そういうことですね。
肝に銘じなきゃ。リーダー、なりたくねぇな。

位置: 1,242
いまや、エンダーの頭にはいっさい疑いがなかった。彼にはなんの助けもないのだ。どんなことに直面しようとも、いまも、この先も永遠に、だれも彼を助け出してはくれないだろう。ピーターは人間のクズだったかもしれないが、正しかった。いつだって正しかった。つまりは、苦痛を生む力こそ意味のあるただひとつの力であり、殺し、そして破壊する力なのだ。

絶望やん。そんなこと言っちゃだめよ、エンダー。

位置: 1,658
こうして、デモステネスという人格は、しだいに独自の命を獲得していった。ヴァレンタインは、原稿を書き終えるとき、自分がデモステネスのような考え方をしていて、計算されたポーズのはずの思想に賛同していることにふと気づくことがある。

ハンドルネームのキャラクターの方が、リアルを支配し始めるってやつだ。アバターのほうが真実、ってね。今はそういう人、増えたんだろうな。

これ書かれたのって1985年ですからね。あたくしの2個下。それですでにアバターの乗っ取りについて考えてんだ。すごいね、SF作家。

位置: 2,691
「あれは無駄づかいなんかじゃありませんでした」エンダーは応じた。「艦を失うことを恐れて危険を冒さなかったら戦闘には勝てませんよ」
メイザーは微笑した。 「いいぞ、エンダー。おまえは学びつつある。だが現実の戦闘では、上官たちや、最悪の文官どもが、あの手のことを怒鳴り散らすはずだ。

どんどん兵士になっていく。エンダーの望まざる方向へ。
しかし才能というのは望むものに与えられるものではないからね。怖いことだ。

The following two tabs change content below.
都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする