『かがみの孤城』感想_2 『君の名は』メソッド

ファンタジーなのは分かるのですが、それにしてもリアリティが薄いところも気になる。

位置: 3,517
先生はきっと、真田美織に「本当なのか」と正面から尋ねるようなことを、きっと、する。
認めるわけなんかないのに。
あの子は、あの子にとって正しい話しか、きっとしない

それはね、みんなそうだよ。人は信じたい話しか信じないし、それを求めている。
だから一生わかり合えない人も多く存在する。

位置: 3,562
「誤解されやすいところもある子だから、こころにはつらく思えたこともたくさんあったと思う。だけど、話してみたけど、真田も心配しているよ。反省して──」
「反省なんて、してないと思います」
声が出た。
熱い声の先が、細かく、震えていた。
こころがそんなふうに言うと思っていなかったのかもしれない。先生が驚いた表情でこころを見た。こころは首を振る。
「反省してるとしたら、それは、自分が先生に怒られたと思ったからだと思います。私のことを心配してるわけじゃない。自分がしたことが先生たちに悪く思われるのが怖いからだと思います。

ここ、いいカタルシスあるね。そう、そういうものよ。
他人に期待しちゃいけない。人には人の事情があるけど、だからといって最後まで合わせる必要はない。

位置: 3,570
「先生」
お母さんが、こころと先生の間に入る。先生を見つめ、静かな声で言った。
「──まずは、こころの口から、何があったのかを聞いてもらうのが先じゃないんですか。その、真田さんというお嬢さんの口から事情を聞いたのと同じように」
先生が 弾かれたように顔を上げ、お母さんを見る。何かを言いかけたように見えたけれど、お母さんは先生に先を続けるのを許さなかった。「もういいです」と続ける。
「今日のところは、もういいです。──次は、学年主任の先生か、校長先生かどなたかと一緒にいらしていただけますか」
先生が黙ったまま唇を引き結ぶ。

ここ、お母さん頑張ったね。
しかし、辻村深月のことだから、ここで終わらせはしないだろうな。

なにせ最低男と最低女ばかりの小説を書く人だ。ここじゃ終わらないだろう。

位置: 3,613
「──ありがとう」
お母さんがぽかんとしたように、唇を開いた。こころを見つめる。こころはどうしても伝えたかった。
「先生に、あんなふうに言ってくれて。私がどう言ってたか、伝えてくれて」  本当は、お母さんの言葉だけで伝わるかどうか心配で、お母さんが先生に最後に言った通り、自分の口で伝えたかった。──ああ、先生の中でのこころの 心証 はたぶん今頃 散々 だろう。真田美織は会うって言っているのに、それを拒むこころは、きっと先生が思う素直さや健全さに欠けた、問題ありの生徒だ。
だけど。
「お母さん、私が言うことの方を信じてくれたから……」
「当たり前じゃない」
お母さんが言った。声の語尾が微かに 掠れ、お母さんが俯いた。繰り返す、「当たり前だよ」の声は、もう完全に震えていた。

いいシーンだ。いいシーン……だが、、ここで終わらないよね、辻村先生!

位置: 4,677
「会えないとも、助け合えないとも私は言っていない。いい加減、自分で気づけ。考えろ。私になんでも教えてもらえると思うな。私は最初からヒントをずっと出している。鍵探しのヒントだって、充分過ぎるほど毎回出している」

教えてもらえると思うな、ってのは大人の視点。

子どもは聞くことが人を煩わせるなんて思っちゃいない。
その時点でこの狼はだいぶ大人だ。

しかしこれを読んでいるとき、あたくしはまだ狼の招待には気付いていません。
薄々、この少年少女、もしかしたら時代がちがうのでは、とは気付いていましたが。

位置: 4,911
「真田なりに一生懸命書いたみたいだから。ちょっと考えてみてくれな」
先生が玄関を出ていく。ドアの閉まるその音を聞きながら、こころは外からの光が消えた玄関の中で茫然と立ちすくんでいた。
言葉が通じないのは──、子どもだからとか、大人だからとか関係ないのだ。

違いない。
いじめの構造を結構、片一方からの理屈で描いている。これってある種のカタルシスにはなるが、危ういとも思います。

位置: 4,917
彼らの世界で、悪いのはこころ。
どれだけこころの立場が弱くても、弱いからこそ、強い人たちは何も後ろ暗いところがないから、堂々とこころを責める。学校にも来ないし、先生に意見も言わない人間は何を考えてるかわからない、理解しなくていい存在だから。
バカにされてる気がする──、という真田美織が使った言葉が、こころの頭の真ん中を、ぐらぐら揺らす。  当たり前じゃないか──と思う。

自分の恋愛のことだけで頭いっぱいな色キチ、馬鹿だと思われて当然。って繋がるんですけど、ここって本当にそうなんですよね。ただ、自分も色キチだったことがあるんで、まぁ、なんとも言えず胸が苦しい。

しかし、そういう狂ってしまうほど楽しいってのもまた、恋愛なんですよね。はた迷惑な話ですけど。

位置: 5,100
「でも、それはこころちゃんが今理解してあげなくてもいいことだよ。真田さんの苦しさは真田さんが周りと解決するべきで、こころちゃんが、あの子に何かしてあげなくてはいけないなんてことは絶対ない」

いじめられたことのある人だったら、じーんとくるところだな。
あたくしもあるけど、まあ、一周して、ふーんって感じになっちゃいましたけど。

喜多嶋先生ならではの言葉だな。この人、過去になにかあったなって思わせる。いい匂わせ。

位置: 5,313
「あ! 私もドラマ観てた」
そんな話をする中で、アイスが空になった頃、ふいに、東条さんの顔つきが真面目なものになった。 「──負けないでよ」
そう、言った。声が少し、硬かった。
「別に無理に、あの子たちとケンカしたりしなくていいけど。ああいう子たちにまた何かされてる子がいたら、助けて、あげたいよね。──ああいう子はどこにでもいるし、いなく、ならないから」

東条、大人だなぁ。達観してる。
そうなんだよね、そこにエネルギー使うの、バカバカしいと思えるようになる。

位置: 6,485
「〝オオカミさま〟の言葉がヒントになったよ。私たちは、絶対に会えないってことでもない。時間が違う雪科第五中からそれぞれ来てる。──違ったのは、年なんだね」

そう、『君の名は』メソッドである。

位置: 6,556
「目指すよ。今から。〝ゲーム作る人〟。マサムネが『このゲーム作ったの、オレの友達』ってちゃんと言えるように」
口が──きけなかった。
見えない力で胸を押されたように、息まで止まりそうになる。鼻の奥がつん、となって、あわてて、熱くなった目を伏せた。 「……なんだよ、それ」
ようやく出した声が 掠れた。

熱いセリフ吐くなぁ。グッとくるよ。

位置: 6,564
「だから、目指せるものができるなら、すごく嬉しい。だから、意地でもそれくらいは覚えたまま、鏡の向こうに帰るよ。約束する。──だから、たとえ、僕やマサムネが忘れても、マサムネは噓つきじゃない。ゲームを作ってる友達が、マサムネにはいるよ」

スバル、熱い。

位置: 6,744
「ここに来てたんだね、姉ちゃん」
城の中を見回す。
「このドールハウスの中で、──最後の一年、姉ちゃん、オレたちと一緒に過ごしてたんだね」

ここもぐっとくるところ。
しかし、まぁ、辻村先生にしては無難な決着、という印象。綺麗に終わりすぎてやしませんか。もっとドロドロぐちゃぐちゃを期待していただけに、少し残念。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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