『デイヴィッド・コパフィールド』感想1 なんだかんだ20世紀に生まれてよかった

19世紀の作品。1世紀前まではこんなことが平然とあったんだな。
現代も、現代だからつらいこともあるけど、でもやっぱり20世紀でよかったな。

本書は,モームが世界の10大小説の1つに選び,ディケンズ(1812-1870)自身も「自分の作品中,最も好きなもの」と語っている作品.自伝的要素の濃い作品で,個性的な登場人物が多数登場し,ユーモアとペーソスが全篇にわたって満ちあふれている.物語は大らかにゆったりと展開し,読書の醍醐味が存分に味わえる

ユーモアもペーソスもあるけど、ペーソス多めよ。

位置:321
「赤ん坊が女の子かってことを話していたわよね」ミス・ベッツィは言った。「女の子に決まっていますとも。いいですか、わたくしには女の子だって予感がするのよ。さあてと、生まれた瞬間から、この女の子は」
「たぶん男の子ですわ」無謀にも母さんは言葉をさしはさんだ。
「いいですか、わたくしには女の子だって予感がするのよ」ミス・ベッツィはやり返した。「逆らうもんじゃありません。生まれた瞬間から、この女の子の後ろ楯になってやるつもりなの。わたくしが名付け親になってやるつもりなのよ。だからお願いね、子供はベッツィ・トロットウッド・コパフィールドと付けてちょうだいな。

もうのっけから嫌な叔母さん登場。名付け親になりたい、だなんてよくもまぁそんなことをぬけぬけと。時代が違うからね、仕方がないけど。

位置: 791
「ああ、もう、 癪 にさわるわね」これまでにも増してボロボロと涙を流しながら、母さんは言った。「そんな失礼な言い方をされちゃ。まるで何でもかんでもまとまって決まっちゃったみたいに、どうしてそうどんどんまくしたてられるの、ペゴティー。だから、何遍も何遍も言っているでしょう、ひどい人ねえ。ごく世間一般のきちんとしたお付き合いで、それ以上の一線は何も越えちゃいませんって。気があるって言うのかしら。じゃあ、どうすればいいの。そりゃ、人間なんて 愚かなものだから、気持を抑えられないことだってあるわよ。それが悪いことなの。じゃあ、おきしますけど、わたし、どうしたらいいのかしら。このわたしに、頭の毛を 剃って、顔を真っ黒にでもしろって言うの。それとも、火とか、熱湯とか、それとも何かで 火傷 でもして、ただれた醜い顔になれって言うの。きっと、ペゴティー、あなたなら言いかねないわね。きっと、あなたなら、手を叩いて大喜びするんでしょうよ」

こういう独白が個性的でいいよね。こういう言い回し、古臭いけど好き。

位置: 1,829
ミスター・マードストンはしっかりしていた。だから、周りの誰もミスター・マードストンほどしっかりしていてはならないのだ。周りの他の誰も絶対しっかりしていてはいけない。というのも、誰も彼もみんな、あの人のしっかり加減に屈しなくてはならないからだった。ただ、マードストンの姉さんだけが例外だった。 この人は しっかりしていて構わないけれど、それは血筋だからで、だから構わないといっても弟より一段下で、弟に準ずる程度でのことなのだった。

デイヴィッド少年よ、気を使うなぁ。

位置: 1,885
か弱いところを、いくらお店広げて披露してくれたところでだ、クレアラ」ミスター・マードストンは答えて言った。「おれは痛くも 痒くもないんだよ。君が息切らすのが落ちさ、徒労だよ」
「どうか、仲直りさせていただきたいの」母さんは言った。「よそよそしく、心も通わないなかで、どうして暮らせましょう。

典型的なDVパートナー。奥さん、お気を確かに。騙されちゃ駄目だ。しかし男女というのはいつでも対等ではなかったのだな。

位置: 2,159
「マードストンさん、あのねえったら」ぼくはあの人に叫び声をあげた。「勘弁してください。お願いだから、ぶたないでちょうだい。勉強、一生懸命覚えようとしたんだけど、あなたやあなたのお姉さんがそばにいると、うまく覚えられないんだもの。本当にできないんだもの」
「できないのかな、本当に、デイヴィッド」あの人は言った。「じゃあ、やってみようじゃないか」
万力でも摑むみたいに、しっかりとぼくの頭をひっ摑んでいたものの、なんとかぼくはあの人の体にしがみつくことで、ほんの一瞬その手を止めさせ、ぶたないでと頼んだりもした。その手を止められたのもほんの 束の間 のこと、というのも次の一瞬には、ぼくはきつく鞭でぶたれ、と同時にぼくの口を押さえつけていたあの人の手を、ぼくは歯にはさんで、がぶりと嚙みついてしまったのだった。このことを考えると、今でも歯が浮くようで不愉快きわまりない。
すると、死んでしまうまで鞭打とうとでもするかのように、あの人はぼくのことを打った。鞭で打たれる音にもまして、ぼくはみんなが二階へ駆け上がってきて、大声をあげているのを聞いた つまり母さんが泣きわめき ペゴティーも泣きわめきしているのを聞いたのだ。

読んでいて居た堪れないよ。こんなひどいことあるか。
まぁ、普通にあるか。しかし、ひどい。あたくしもつい手が出ちゃうほうだけど、うーん、人のふり見て我が振り直さねば。

位置: 3,020
「韃靼人さながらだ」義足の男は言った。
「いったんわしがやると言ったら、必ずやる」クリークル校長先生は言った。「いったんわしがやらせると言ったら、必ずやらせてしまうんだ」
「 いったんやらせると言ったら、必ずやらせてしまうんだ」義足の男は繰り返した。

この義足の男のオウム返しぷり。無能の定番。
非常に弱い立場の人を冷笑するようであれだが、コメディとしてすでに完成している。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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