『セメント樽の中の手紙』感想 労働者の本

あたくしは好きです。

日本のプロレタリア文学を先導した作家、葉山嘉樹を代表する短編小説。初出は「文藝戦線」[1926(大正15)年]。水力発電所の建設現場で働いている松戸与三は、或る日セメント樽のなかにあった木箱を見つける。そのなかには過酷な労働条件のなかで働く女工の悲痛な叫びが記された手紙が入っていた。宇野浩二にも激賞された名作。

プロレタリア文学ですが、メッセージは弱めでエンタメ性が高いと思います。
だから好き。メッセージ強めなのはあんまりなので。

位置: 43
私の恋人はセメントになりました。私はその次の日、この手紙を書いて此樽の中へ、そうと仕舞い込みました。
あなたは労働者ですか、あなたが労働者だったら、私を 可哀相 だと思って、お返事下さい。
此樽の中のセメントは何に使われましたでしょうか、私はそれが知りとう御座います。

ここでヒロインにセメントが使われたかどうか聞かせる。
そこが何ともね。あたくしは好きだけど。

位置: 65
松戸与三は、 湧きかえるような、子供たちの騒ぎを身の廻りに覚えた。
彼は手紙の終りにある住所と名前を見ながら、茶碗に注いであった酒をぐっと一息に 呻 った。
「へべれけに酔っ払いてえなあ。そうして何もかも 打ち壊して見てえなあ」と怒鳴った。
「へべれけになって 暴れられて 堪るもんですか、子供たちをどうします」  細君がそう云った。
彼は、細君の大きな腹の中に七人目の子供を見た。

そして最後は現実に戻る。矮小化された行って帰ってくる話。
現実と非現実の交差がとてもおもしろいと思ったんです。

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