カフカ著『城』感想 訳が悪いわけではなさそうだ

何度か挑戦し、読了失敗し続け、今回なんとかある程度読み、そしてあたくしには要らない本だと分かりました。これが全く面白いと思えないのです。

少なくとも本に不条理は求めていない。

翻訳が悪いのかな、と思い、青空文庫ではなくちゃんと角川文庫のをお金を出して買いました。どうやら亡くなられたドイツ文学者の名訳だそうで。これで駄目なら……と思いチャレンジ。

しかし駄目でした。

ある冬の夜。Kという男が、どこともはっきりしないある村にたどり着く。Kは村の近くにある「城」から仕事を依頼された測量師だった。ところが「城」からはなんの連絡もない。村人は外来者Kに「城」への道を教えようとしない。「城」は厳然と存在するのに、Kはどうしてもそこへ到ることができない。やがてKは酒場で働く女と同棲することになるが……。20世紀文学に異彩を放つカフカの代表的迷宮世界。カフカと同じく惜しくも41歳の若さで世を去った優れたドイツ文学者、原田義人の名訳でおくる。

あらすじや評判だけできくと面白そうに思えるのですが、これが、まー長い。とにかく長い。これを退屈と言わずしてなんという。

位置: 1,318
ああ、あなたはまた怒りましたね。いいえ、まだいかないで下さい。このお願いだけは聞いて下さい。どこへいこうと、あなたはここではいちばん無知な人間なのだということを、はっきり意識していて下さいよ。そして、気をつけて下さいな。フリーダがいるためにあなたが無事でいられたこの家で、あなたは心を開いておしゃべりしてかまいませんし、またたとえば、あなたがどんなふうにクラムと話すつもりでいるのかを、わたしたちに打ち明けることもできます。ただほんとうに話すということ、ほんとうにクラムと話すということ、そればっかりは、どうか、どうか、しないで下さい」

この閉鎖的空間、どことなく日本ぽく思ってしまうんですよね。
王様が強大で、そこには独特のヒエラルキーが存在し、市民がそれを忠実に守ってしまう。内側からの圧が強大だが、外部から見ると滑稽という。

クラムは結局でてこないというのも面白い。象徴的です。

位置: 1,389
あなたのおっしゃるように、あなたは測量技師に採用されました。しかし、残念なことに、われわれに測量技師はいらないのです。測量技師のやる仕事なんか少しもないでしょう。われわれの小さな管理地域の境界は杭で標識をつけてあり、いっさいがきちんと登記されてあります。

来た途端にこれ言われたら嫌だろうなぁ。
小学生の頃、人生に行き詰まったのを思い出しました。

位置: 1,620
あなたの件でこうした決定が行なわれたかどうかは私にはわかりません。──いろいろな点でそうだといえますし、またいろいろな点でそうではないといえます──しかし、もし決定が下されたのであれば、招聘状があなた宛に送られ、あなたがここまで長い旅をしてこられたわけで、その場合に長い時間が経ち、ソルディーニはそのあいだ依然としてここで同じ問題にたずさわって、へとへとになるまで仕事をし、ブルンスウィックは策動をつづけ、私はこの二人に悩まされていたわけです。

知らんよ、そっちの都合なんてな、ってね。
カフカもそんな目に遭い続けてきたのだろうか。人間って組織化すると駄目ね。

位置: 1,689
「それなら、彼がそういう男だということを信じて下さい。私はこのシュワルツァーと、私が到着した日のうちに早くも腹が立つ一幕を演じたのです。そのとき、この男が電話でフリッツという下級の執事のところへ照会し、私が土地測量技師として採用されたという知らせをもらったのです。村長さん、あなたはこのことをどう説明されますか」
「きわめて簡単です」と、村長がいった。「だとすると、あなたはまだ一度もほんとうにわれわれの役所と接触されたことがないわけです。こうした接触はすべて見せかけのものにすぎないのに、あなたは事情をご存じないものですから、それをほんとうの接触と思っておいでです。

暖簾に腕押しを延々と続ける、ただそれだけの物語。
これって面白いか?

位置: 1,728
「あなたの考えかたにはある真実な点があります」と、村長がいった。「城のいうことを言葉どおりに取ってはいけないという点では、あなたのいわれることはもっともです。しかし、用心はどこでも必要であって、ここだけのことではありません。そして、問題となっている発言が重要であればあるほど、それだけ用心が必要なのです。

ぐるぐると意味はわかるが訳がわからないことを続けるだけの物語。
どこに需要があるのか。

位置: 2,362
けれども、子供っぽく分別を欠いてはいるが、彼女もおそらく城と関係をもっているのだろう。もし彼女のいうことが噓でないなら、客室つきの女中だったというが、自分のもっているこの特権に気づかないで、ここで昼間を眠って過ごしているのだ。

誰もが敵にみえてくる。疑心暗鬼。

位置: 2,429
一壜取り出して、栓を廻して開け、匂いをかいでみた。思わず微笑しないではいられなかった。匂いは甘美で、 媚びるようであった。まるで、大好きな人から賞め言葉や親切な言葉を聞かされて、なんのことなのかよくはわからず、またわかろうともせず、そういう言葉を語ってくれるのが自分の大好きな人なのだということを意識しているだけで幸福感を味わうようなものであった。 「これはコニャックかな?」

飲むしかない。そういうときはね。

もはや何の話だったかわからないが、あたくしの人生には不要な本だということはわかった。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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