『天才はあきらめた』感想2 南キャンを初めてみたときの衝撃を思い出した

恐ろしく前向きで上昇志向が強い。すごい人だとは思うけど、この本読んで「山ちゃんが好きになった」とは言えないな。普通の強い人だ。

位置: 386
寮に入って強烈に覚えているのが、入ったばかりの1回生に与えられる恒例行事。それは、夜、北斗寮の近くの女子寮の前に行き、1列に並んで女子寮に向かってみんなで一斉に叫ぶというよくわからない儀式だった。 「蛍雪寮の皆様。ぼくたち北斗寮の童貞にABCを教えてください!」
これを上回生のオーケーが出るまで叫び続けるという、謎の迷惑行為。毎年恒例のことで、女子寮の方も怒らない。
ある程度したら上回生が「逃げろ!」と号令を発し、寮に逃げ込む。そして、みんなで笑いながら夜を明かす。世が世なら、我々は村々を襲う、ならず者とかだったのでは?という遊びだった。

どこの寮も同じようなことやってんだなー。あたくしの寮にもその手の話はありましたね。

位置: 502
おかっぱ赤眼鏡の男が必死で男前を探し、話しかけまくる。一見危ない感じの絵だが、自分の中で、コンビの相方は絶対男前と決めていた。
理由はシンプルで、自分の力量では集められない層、つまりは女子のファンを獲得するため。導入部はそこから入ってもらってネタを見てもらおうという作戦だった。相方は広告塔として必要だった。
誘うときには、ある作戦を使っていた。数冊の使い古したノートを持ってそれを目の前に置き「ネタはいろいろ考えている」というアピールをする。

吉本に限らずですが、最近は男前とブサイクの両極端コンビが増えましたよね。もしくはイケメン同士か。そりゃ、舞台に立つわけだからいい男が有利なのは間違いないですが。

位置: 601
「必死」「一生懸命」。この単語が似合わない、「本当の天才」が創るべきなのがお笑いという世界で、何も苦労なく頭の中に思いついたことを言うと目の前の人が笑ってくれる人たち、それが本物の芸人なんだとわかっていた。というよりも、もはや、憧れてしまっていた。
しかし、それ以外の人はこの世界に向いていないという答えを出すと、その瞬間にそれは「サボる理由」に変化してしまう。だから必死でその答えを無視するために、逃げるという選択肢なんて思いつかないくらいの努力をしようと思った。

めちゃめちゃポジティブ。ネガティブの革を被った上昇志向の塊ですよ。こええな、山ちゃん。こっち側の非生産的な人間かと期待したのに。

位置: 655
お恥ずかしい話だが、僕はこうして時々天狗になる。天才と思い込ませすぎたときに現れる、この山里天狗、どう黙らせるか?
まずは天狗期間にサボっていた時間の再確認と、同じ年くらいの活躍している人たちの成し遂げたことの確認、そして信頼してる人からの落胆の声、これを集めるとその鼻は折ることができた。

そしてめちゃめちゃ自重する。ストイック。己の中のジョニーを手懐けるすべを知っている。自堕落なようでいて全然。そりゃライザップ出来るわ。分かるもん。

位置: 758
その一言一言が、自分は特別なのだと思わせてくれて心地よかった。何一つ特別なことはないのに。この言葉たちに頼ってばかりいると、ただの勘違いさんになってしまう。それをしっかりと活用するには、認識を冷静に保つことが大事だった。
僕は自分に言い聞かせた。 「周りがそう言えば言うほど、どんどんと退路がなくなっていくんだぞ」

己の弱みを熟知している。そこがこの男のすごいところ。

位置: 844
そもそもモチベーションなんて上がっていないのが普通なのだ。モチベーションが上がっている状態っていうのは、あの国民的兄弟キャラのゲームの中で言うとスターを取っている状態。ただのラッキーで、モチベーションが下がってる状態が通常なんだから、常として頑張らないといけない。そう考えるとサボる数は減った。

そして結構従順なんですよね、山ちゃんて。
打てば響く。伸びるタイプだもの。

位置: 912
このモヤモヤを晴らすために、僕の周りでおもしろいと評価されていた人たちのネタ作りを見せてもらった。
圧倒的な敗北感だった。それは、ボケのほうがボケだけ考えていって、あとは2人で話しながら作っていくというものだった。台本を覗き見るとボケだけが書いてあって、突っ込みの部分は空欄になっていた。それがすごくうらやましかった。
そこから、ボケが台本にもないようなことを言ったりして2人で笑いながらネタ合わせをしていた。
僕はネタ合わせで笑ったことなんか一度もなかったから、心底うらやましかった。そこで本来なら軌道修正すればよかったのに、僕は間違ったほうへ行った。

ネタ合わせで笑ったことなんか一度もない、ってのはすごいよね。まじでこええ人だ。

位置: 999
そして次の課題は、関西の重鎮の師匠たちの前でネタ見せ。若手にはかなり緊張する課題だった。師匠に見てもらうという条件を聞いた時点で、僕は決めた。オーソドックスな、基本に忠実なネタでいこうと。
みんなネタにはこだわりがあるもの。そこを貫き通すことの格好よさはわかっていた。だが今は、師匠に見ていただく以上、その格好よさを出すときではないと富男君と話をした。基本に忠実なネタにし、さらに多用していた芸能人を使ったボケを減らした。
結果、勝ち残った。決勝進出、つまりゴールデンでネタを披露できる。そして若手のうちに立つのが相当困難な「なんばグランド花月(NGK)」に立てるという成果を得た。
そのときそのときの最善のゴールは何かを見つけて逆算するという行為は、すごく大事だとこのとき気づいた。

逆算はとても大事。これは芸に限らず。
あたくしもこれが出来ずに失敗を繰り返しました。

頭がいい人はこれが最初から出来たりする。すごい。

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