はっきり言って気持の良くない作品
とにかく、読んでいながらどんどん気持が下向きになっていきます。
スカッとしない。
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事件が最初に明らかになる嫌さ
ある痛ましい事件の原因を、被害者である男が追っていくのですが、これがまた、痛すぎるのです。
なぜなら、最初に事件の概要が説明され、そこに向かってソロリソロリと近づいていくから。
それがまた、人間の違法まではいかない罪によって事態が最悪に向かっていくから辛い。
誰もがやったことのある、小さい罪。
車庫入れが出来なくて渋滞を起こすとか、ちょっと仕事の手を抜くとか、同僚を見放すとか。
そういう細かいことが積み重なって、起こる事実を最初に突きつけられるから困ったもの。
ミステリーとか謎解きじゃないけれど、じんわりと、忍び寄るように恐怖が迫ります。
不都合主義とでも言いますか
ご都合主義ってぇのは、自分に都合のいいことばかり取り上げることですが、本作はその逆。
不都合なことばかり起きる。
風がふけば桶屋が儲かる、の逆。
負のピタゴラスイッチ。
これが、白けた目で見られればどうってことないんでしょうけれどもね。
みんな少しずつ身勝手で、だから少しずつしか責任がなくて、それで自分は悪くないと言い張るんだよ。おれは誰を責めればいいのかわからなくなってきた。世界中の人全部が敵で、全員が責任逃れをしている気がする。おれたちの悲しみや苦しみをわかってくれる人は、世の中にいないのかもしれない。そんなふうに考えると、怖くて悲しくてしょうがない
文章はやたらと事務的
合計すると600p近い量なので、結構読むのが骨かと思われますが、そうでもないんですね。
正直、文章が上手いとかではないのですが、事務的に、淡々と内面やら事象を記します。
宮部みゆきのような上手さではないのですが、新聞のようなわかりやすさがあります。
発売が朝日新聞社だからですかね。
共通点がありすぎて辛い
- 子どもが巻き込まれる
- クレームを言う・言われる
- 家族関係で苛む
このあたりは、あたくしの生活にも深く関わりがあり、とてもじゃないけど読みながら平常心ではいられませんでした。
弱点であります。そこをついてくるとは……ずるいですな。
あと、糾弾される側の人間のみっともなさ、ヘタレさは見事でした。
カタルシスを程よく用意しておくのも作者の腕。ここは感服です。しかし、ずるい。
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