トリネタ『子別れ』を漫画でどう描くか
難しいと思うんですよ、子別れはね。
落語の中でも最も「泣ける」みたいな宣伝をされるし、漫画はそう描かなきゃならないから。
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そりゃ、子別れで泣いたことは一度や二度じゃないですよ。
でもね、「泣ける」みたいな切り口で聞くもんじゃないでしょ、落語って。
あたくしは結構、芝浜とかでも泣いちゃうし、藪入りとかでも泣いちゃう。
でも、「落語は泣けるよ」というような宣伝はしないし、それは落語の本懐ではないと思うのです。
↑これは雲井先生の『昭和元禄落語心中』のセリフですが、あたくしの感覚に近いです。
「ための」ってぇのがちょっと引っかかりますが、「共感の芸能」だと、信じています。
だから、泣くのも笑うのもできるけど、「泣ける笑える」といった評価をするものではない。
でも漫画だからね
落語漫画の傑作『寄席芸人伝』でもそうですけど、『子別れ』は泣ける、と描かれます。
もちろん、漫画ですから。その説明がキャッチーだし、分かりやすいし。
泣くだけじゃないと思うのは、あたくしのようなひねくれ者のオタクだけ。
「すべてのジャンルはオタクがダメにする」とは誰の言葉だったかしら。
至言だと思うのです。枝葉にこだわる人は本質を履き違えることがよくあります。
子別れも幹は「泣ける」でいい。
でも、でもですよ。
そう伝えるだけの漫画は評価したくない。したくないんです。
初心者にも納得してもらえて、それでいてオタクも溜飲を下げる。そんな落とし所を、落語漫画には探してほしい。
その落とし所を、あたくしは見ている。漫画に限らず、落語を紹介するメディアすべてに対して、どう「共感の芸能」であることを伝わるように工夫をしているか、を見ているのです。
参ったよ、チャコの子別れ
ここまで言わせて頂いて、最後に言いたい。
「参りました」と。
この作品の子別れ、最高でした。
主人公が最後の最後に高座にかけるんですけどね、それまでの主人公への感情移入具合とか、その辺がどーっと目頭に雪崩れ込むんですわ。
参ったの一言。『寄席芸人伝』、『昭和元禄落語心中』に並ぶ、落語漫画の傑作殿堂入りです。
ちなみに、主人公の茶子のモデルは先代の金馬師匠のようですが、あまり金馬師匠ぽくはないですねぇ。肝っ玉の小さいところなんかは、あんまし似てないんじゃ。
あと、このセリフ、なんだかしみじみきたなぁ。
ほんと、落語愛あふるる気がしちゃう。川島先生。どうなんでしょ。
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