あと、登場人物が最初から最後まで一貫してるのも、エンタメに欠けるように思いました。
位置: 4,091
「そういう、いったんケチのついたアンラックな子と一緒にいると、マサルの運まで吸い取られるわよ。もしかして、マサルが優勝候補なのを知ってて、自分の復帰に利用しようとしてるんじゃないの?」 マサルはぽかんとしてしまった。 「本気で言ってるんじゃないだろうね?」 思わず聞き返すが、チャンの表情は大真面目だ。 マサルは腹を立てるか一笑に付すかで迷ってしまった。そして、こういうところも自分とチャンの嚙み合わないところだったな、と思い出した。 いつも理詰めで合理的な思考を自慢にしていて、他人の非論理的な発言や情緒的な意見を馬鹿にしているくせに、変なところで運気だのツキだのと言い出すのだ。マサルだって、人が生まれ持った運やツキといったものが存在することは知っているけれど、チャンの言うそれは恣意的なものに感じられて仕方がない。 話して通じる相手じゃない。
最大公約数的なピアニスト、という何とも情緒のない表現のされかたをしたチャンさん。最後まで噛ませ犬感が凄かった。悪役は最後まで悪役でした。
位置: 4,363
芸術に点数がつけられるか? そう聞かれれば、誰だって「優劣などつけられない」と答えるだろう。それはむろん、誰でも頭では分かっている。 しかし、心では優劣がつけられたところを見たいのだ。選びぬかれたもの、勝ち残ったもの、ほんの一握りの人間にだけ許されたギフトを目にしたい。そこに労力がかけられればかけられるほど、歓喜と涙はより感動的で興奮させられるものになる。
そうなんだよね。人間、ランク付け大好きだものね。綺麗事と建前というのは、全世界共通だよね。
位置: 6,387
これまで二回聴いてきたステージでも気付いてはいたが、この子の作品のとらえ方は独特だ。 特に近年顕著な作曲家主義もあって、おおかたの演奏者は作曲家の意図を理解して、曲のほうに自分を引き寄せていく。作曲家が何をイメージしていたか、当時の時代背景や、作曲家自身が何からインスパイアされたものなのかを調べ、作曲家のイメージに近付けていくというアプローチがほとんどである。 この子は逆だな。曲を自分に引き寄せるというか──それはプロやうるさ型の反感を買うものであるが──いや、そうではない。曲を自分の世界の一部にしてしまう。曲を通して、自分の世界を再現している──どんな曲を弾いても、何か大きなものの一部にしてしまっているような。 鏡に映った五つの風景。
いい文章ですよ。ちょっとカタカナ多いけど。一之輔師匠の落語とか、こういう感じがする。古典を自分の方に手繰り寄せる、というか。
クラシックと落語、意外と共通点が多くてね。面白かった。
でも、やっぱり曲の美しさの描写が単調で冗長のような気がします。人にはオススメしないかな。大賞、と言われてもピンとこない。
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