『夏への扉』感想② 後味スッキリ猫かわいい #猫 #ハインライン

文体も興味深いながら、ストーリーも素晴らしい。

落ちては上がり、また落ちる。
そのワクワク感たるや。SFとはかくあるべしという感じ。

そう、SFはもしかしたら物語に意味が集中するジャンルなのではないかしら。うん、きっとそう。日常ものだったら文字の羅列そのものが美しかったり共感を呼んだりするけど、SFはそうはいかないものね。

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「ダニイおじさん! ほんとに嬉しいわ、来てくれて」  ぼくは、リッキイにキスはしなかった。身体に手をふれもしなかった。ぼくは、子供を、やたらといじりたがるほうではなかったし、リッキイも、ふれられるのが決して好きな子供ではなかった。ぼくらの友情は、リッキイの六つのときから、こうしたおたがいの個性と尊厳とを認め合うデリカシイの上に 培われていたのである。

この妙な大人びた関係、微笑ましいね。このあたりから、なんとなく、終わりが見え始める。ハッピーエンドに向かって少しずつ動いていく。その感覚が楽しい。

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「ねえ、ダニイおじさん?」 「なんだね、リッキイ?」  リッキイは顔もあげずにいった。低い声で、ほとんど聞きとれないほどだった。だがぼくには聞こえた──彼女はこういったのだ。「もしあたしがそうしたら──そうしたら、あたしをお嫁さんにしてくれる?」  耳に 轟々と耳鳴りがし、目に 煌々 と光が明滅した。ぼくは必死の思いで答えていた。彼女のそれよりは判然と、力強く、「もちろんだとも、リッキイ。それこそ、ぼくの望みなんだ。だから、ぼくはこんな苦労をしてきたんだよ」

いいよね。35にもなってプロポーズで涙するようじゃ、まだまだ青いけどさ。それでもいいシーンだ。

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だが、リッキイは、つまらぬことにいつまでもかかずらう性質の人間ではない。ぼくがうんざりした様子を見ると、彼女は優しく声をかけた。「ここへいらっしゃい、あなた」彼女はぼくの残り少ない毛髪に指を通して 梳くようにしながら、そっとキスした。「あなたは一人でたくさんよ。二人もあなたがいたんでは、あたしには愛しきれないわ。ひとつだけ、お答えして──あなた、あたしが大人になるのを待っているあいだ、楽しかった?」 「楽しかったとも、リッキイ!」  だが、よく考えてみると、ぼくのこの説明も、現実に起こったことのすべてを説明していないのだ。

エンディングとして、これ以上爽やかなものはないでしょう。
感動的。

素晴らしい名著。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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