太宰の『恥』は難しい

ほとんど自嘲的フィクション。
かなりのファンじゃないと理解できない部分もあると思われます。

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「無頼派」「新戯作派」の破滅型作家を代表する昭和初期の小説家、太宰治の短編。初出は「婦人画報」[1942(昭和17)年]。私小説家を思わせる戸田という作家に匿名で応援の手紙を出して、最終的に会いに行くという話で、友人の菊子へ宛てた「私」の書簡という形をとっている。私小説作家と見られてきた太宰による私小説への批評ないし皮肉と考えることもできて興味深い。

前提が奇抜すぎる。いきなり読みはじめて「え?」となりました。まったく嫌になる。名著『女生徒』が大きくなったらこんな感じなんだろうか。延長線上にある気はします。

太宰の女性感は本当に謎だ。果たして女性に支持されているのだろうか。人を選ぶんだろうか。普遍的なんだろうか。

位置: 2
菊子さん。 恥 をかいちゃったわよ。ひどい恥をかきました。顔から火が出る、などの形容はなまぬるい。草原をころげ廻って、わあっと叫びたい、と言っても未だ足りない。

こういうことを、当時の女性は言ったのか。普通の話し言葉なのか。小津映画みたいだが。

位置: 31
どうか、貴下に於いても、ちょっと反省をして下さい。私は、貴下の無学あるいは文章の拙劣、あるいは人格の卑しさ、思慮の不足、頭の悪さ等、無数の欠点をみとめながらも、

文章から教養がほとばしる。拙劣なんて言葉、リアリティがあるのか。

位置: 152
小説家は悪魔だ! 噓つきだ! 貧乏でもないのに極貧の振りをしている。立派な顔をしている癖に、醜貌だなんて言って同情を集めている。うんと勉強している癖に、無学だなんて言ってとぼけている。奥様を愛している癖に、毎日、夫婦喧嘩だと吹聴している。くるしくもないのに、つらいような身振りをしてみせる。私は、だまされた。

そうだね。小説家ってそういうもんかも。
太宰の露悪的で自嘲的なところがよく出てる。

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