『銃・病原菌・鉄』 コロナ禍で読む人、爆増? 1

読書家にとっちゃは何を今更、の本でしょうね。
以前、私淑する町田さわ子氏が言及されているのを見て以来、ずっと読みたかった本。

今更でもなんでも、読み始めました。
しかし硬派な本!

位置: 226
なぜ、人類社会の歴史は、それぞれの大陸によってかくも異なる経路をたどって発展したのだろうか?
人類社会の歴史の各大陸ごとの異なる展開こそ、人類史を大きく特徴づけるものであり、本書のテーマはそれを解することにある。

広い!広いよ、テーマ。

位置: 334
ニューギニア人のおもな死因は昔から、殺人であったり、しょっちゅう起こる部族間の衝突であったり、事故や飢えであった。こうした社会では、頭のいい人間のほうが頭のよくない人間よりも、それらの死因から逃れやすかったといえる。しかし、伝統的なヨーロッパ社会では、疫病で死ぬかどうかの決め手は、頭のよさではなく、疫病に対する抵抗力を遺伝的に持っているかどうかであった。

コロナ禍の今、タイムリーな話題ですよね。抵抗力のない人間は死んで当然、という歴史がそこにあるわけだ。そこには人道主義も何もないわけです。

位置: 390
ヨーロッパ人が、他の民族を殺したり征服することができるようになった直接の要因を指摘して、ヤリの疑問に答えようとする説もある。その要因とは、ヨーロッパの銃や伝染病や鉄器や、さまざまな加工品のことである。これらがまさしくヨーロッパ人による征服を可能にした直接の要因であるという意味において、この説は正しい。しかし、たんに直接の要因を解明し、表層的な(一段階だけの)説明しか提供していないという意味において不充分である。アフリカ人やアメリカ先住民ではなく、ヨーロッパ人が銃や病原菌や鉄を持つようになった究極の要因を探究しなければならない。

単純に文明の度合いだけじゃないよ、ってことですな。面白くなってきた。

位置: 410
人類史について書かれたその他の本も、過去五〇〇〇年間に起こった文字を持つユーラシア大陸の先進文明に焦点が当てられているものが多く、コロンブスのアメリカ大陸発見以前に存在していた先住民文明については簡単にしか触れていない。近年のユーラシア文明との関係において以外は、他の文明についてもほとんど記述されていない。トインビー以降、人類史を形作った要因の総合的解明を試みることは、手に負えない問題の解明の試みだとみなされ、歴史学者が好んであつかうテーマではなくなってしまった。

しかし現代じゃ、サピエンス全史を始め、結構興味深く読まれているテーマでもあります。面白いもんね。

位置: 443
われわれは、西暦一五〇〇年の時点の人類社会の差異を、生物学的に説明しようとすることは間違いであると確信している。しかし、正しい説明を知らされているわけではない。大半の人びとは、人類社会の歴史に見られる大きなパターンについて、詳細かつ説得力があり、納得できる説明を手にするまでは、相変わらず生物学的差異に根拠を求める人種差別的な説明を信じつづけるかもしれない。私が本書を執筆する最大の理由はここにある。

それこそ、人を肌の色で差別してはいけないという「道徳」から来るものですね。しかしそれは科学的根拠ではないわけです。「やはり人種差別は科学的にも間違っている」ことの証左をしてくれるという大変にありがたい本著。

位置: 1,363
インカ皇帝アタワルパがペルー北方の高地カハマルカで出会ったときである。アタワルパは、アメリカ大陸で最大かつもっとも進歩した国家の絶対君主であった。対するピサロは、ヨーロッパ最強の君主国であった神聖ローマ帝国カール五世の世界を代表していた(皇帝カール五世は、スペイン王カルロス一世としても知られている)。そのときピサロは、168人のならず者部隊を率いていたが、土地には不案内であり、地域住民のこともまったくわかっていなかった。いちばん近いスペイン人居留地(パナマ)から南方1,000マイル(約1,600キロ)のところにいて、タイミングよく援軍を求めることもできない状況にあった。一方、アタワルパは何百万の臣民を抱える帝国の中心にいて、他のインディアン(インディオ)相手につい最近勝利したばかりの八万の兵士によって護られていた。

168人対80,000。結果は火を見るより明らかのような気もしますが、現実は違ったというわけです。ここもすごいよね、実際どんな感じの無双を168人が見せたのか。

位置: 1,562
ところが、スペイン人のインカ征服では、銃器はたいした役割を果たしていない。火縄銃と呼ばれていた時代の銃は、装塡して発射するのに手間がかかった。しかもピサロ側が持っていた銃はたった12丁だった。たしかに発砲したときには、すさまじい心理的効果はあっただろう。しかし、スペイン人のインカ征服において銃器よりもずっと重要だったのは、スペイン側が鉄製の剣や槍や短剣などを持っていて、ほとんど武装していなかったインディオたちをそれらの武器で惨殺できたことである。

しかも銃は12丁。しかし勝った。
鉄や槍ってのはそんなにすごいんだね。投石とかじゃ相手にならないわけだ。

位置: 1,602
世界史では、いくつかのポイントにおいて、疫病に免疫のある人たちが免疫のない人たちに病気をうつしたことが、その後の歴史の流れを決定的に変えてしまっている。天然痘をはじめとしてインフルエンザ、チフス、腺ペスト、その他の伝染病によって、ヨーロッパ人が侵略した大陸の先住民の多くが死んでいるのだ。たとえば、アステカ帝国は1520年のスペイン軍の最初の侵攻には耐えているが、その後に大流行した天然痘によって徹底的に打ちのめされた。皇帝モンテスマを継いだばかりの皇帝クイトラワクも、やはり天然痘で死んでいる。ヨーロッパからの移住者たちが持ち込んだ疫病は、彼らが移住地域を拡大するより速い速度で南北アメリカ大陸の先住民部族のあいだに広まり、コロンブスの大陸発見以前の人口の95パーセントを葬り去ってしまった。北アメリカ大陸でもっとも人口が多く、もっとも高度な社会組織を有していたミシシッピ首長社会も疫病の犠牲となり、1492年から1600年代後半にかけて消滅してしまったが、それはヨーロッパ人がミシシッピ川流域に住みはじめる以前のことである。

実際、天然痘でアメリカ大陸人口の95%が死んだなんて言われて納得できますか。できませんよ。しかしそれくらい猛威を奮ったわけですな。そこで無力化された土地に、ピューリタンたちが乗り込んできたというのがダイヤモンド氏の主張なんだな。

すごい壮大な話。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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