『四畳半タイムマシンブルース』感想 森見さん、もうそこから離れようよ

ファンだから買うけどね。やっぱり腐れ大学生ものばかり書いてちゃ、前に進めないと思うんですよ。それとも書きたいのかしら。

水没したクーラーのリモコンを求めて昨日へGO! タイムトラベラーの自覚に欠ける悪友が勝手に過去を改変して世界は消滅の危機を迎える。そして、ひそかに想いを寄せる彼女がひた隠しにする秘密……。
森見登美彦の初期代表作のひとつでアニメ版にもファンが多い『四畳半神話大系』。ヨーロッパ企画の代表であり、アニメ版『四畳半神話大系』『夜は短し歩けよ乙女』『ペンギン・ハイウェイ』の脚本を担当した上田誠の舞台作品『サマータイムマシン・ブルース』。互いに信頼をよせる盟友たちの代表作がひとつになった、熱いコラボレーションが実現!

アマゾンの評価でこれが☆4を超えるというね。
悪くはない、というかすごく良いんだけど、これに安易に☆5をつける気にはなれないんですよね。『サマータイムマシンブルース』という名作が原作にしっかりとあるわけで。

位置: 469
小学生の頃、朝からプールへ出かけて泳いだ午後のようだった。気怠い陽射しを眺めながらアイスクリームを食べたりして、心地良い疲労に眠気を誘われる。空っぽになったようでありながら 充たされたようでもあって、 淋しさの入り交じった甘い気持ちが湧いてくる。それでいて我が前途には真っ白なキャンバスのように夏休みという時空が広がっているのだ。小学生ながらに「これが幸せというものか」としみじみ思ったものである。

思ったなー、思ったよね。あれは良かった。永遠に大人になんかならないと思っていた。

位置: 1,457
「なるほど。こういうことでしたか」
小津が耳元で囁いた。
もはや言い訳する気にもならない。
「末代までの恥だ」と私は唸った。
「もとから末代まで恥ずべき存在じゃないですか。今さら取り繕ったところで何になるんです。これも人間としてひと回り大きくなるための修行ですよ」

そういうことを言う小津が好き。

位置: 1,478
「どうせ『戦略的撤退だ』とか『明日があるさ』とか言い訳してたんでしょ。その挙げ句、どこぞの馬骨野郎に先手を打たれて……まったくもう、恥を知るべき!」 「おい、正論はよせ」 「少しは悔しいと思いなさい」

己の文章の本歌取りというか、うーん、どうなんでしょう。
やっぱりマーケティング的には四畳半神話大系で行くのが正解なんでしょうか。

位置: 1,820
「先輩はここに残ってください」
「なぜ! どうして!」
「だって昨日、ここで私たちは約束したんです!」
明石さんは訴えるように私を見つめた。
「五山送り火に私を誘ってください。そうすれば辻褄が合いますから」

いい展開だよなー。明石さんから言われるというこの情けなさも含めて。

位置: 2,004
私は熊のぬいぐるみを高く掲げながら、雪を踏んで彼女に追いついた。彼女は落とし物を受け取って、「ありがとうございます」と白い息を吐いた。哲学者のように難しい顔をして、一心不乱にぬいぐるみを揉んでいる。
それはなんですか、と私は訊ねた。
彼女はふわっと眉を緩めて笑った。 「これはもちぐまですね」

しかもベースがアニメ版というね。確か原作にはもちぐまはなかったと記憶しています。
森見さん、それでいいのか。

位置: 2,271
「時間は一冊の本みたいなものだと考えてみたんです」
明石さんは藍色の空を見上げながら語った。
「それが過去から未来へ流れていくように感じるのは、私たちがそのようにしか経験できないからです。たとえばここに本が一冊あるとしたら、私たちはその内容をいっぺんに知ることはできません。一枚ずつ 頁 をめくって読むしかないんです。でもその本の内容そのものは、すでに一冊の本としてそこにある。遠い過去も遠い未来もすべてが……」

本なら遡れるからね。言い得て妙だが、妙すぎる。

面白かったけれど、これでいいのか?とは思いますね。
マーケティングがそんなに大切かしら。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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