『洞窟オジさん』感想2 憧れないけど尊敬する

位置: 229
獣が入ってくるのを防ぐために、入り口にはひのきの枝を束ねて並べた。ひのきの枝は入り口の風よけにもなる。ひのきの枝をいくつもいくつも藤のつるで束ねていくと、雨風がしのげる戸のようになるんだ。これで、どんなに寒い冬でも暖かくいられる。そのうえ、外から中が見えないから人が住んでいるとはわからない。
親父がかやぶき屋根の家を作っているのを見て育ったから、それくらいの知恵はあったし、こうすればいいか、ああすればいいかと、親父の仕事を思い出しながら作った。
親父から逃げ出したくてたどり着いた足尾銅山で、親父を思い出してひのきの枝を束ね、入り口の風よけを作る。そのときはただただ必死で作っていただけだったけど、今思えば何とも複雑なもんだな……。

皮肉だな。しかし人生というのはそういう皮肉がたくさんある。
オイディプスが未だに語られるのも、父子関係というのが人生の一定の重いテーマだということかしらね。

位置: 306
ヘビの食べ方には3種類ある。
ひとつは「ヘビのたたき」と呼んでいたが、生のまま食べる。皮をむき、木の枝で骨を砕く。ナイフでぶつ切りにして、しょうゆをかけていただく。だけど、「たたき」はのみ込んでも、胃の中でぶつ切りの胴体がくちゃくちゃと動いていた。さすがに最初は吐き気がしたけど、食べないと死んじゃうからな。必死にのみ込んだよ。

すげぇ体験。蛇はうまい、ってのは方々で聞くよね。

位置: 794
いろんな動物を食べてきたおれだが、このタヌキは捕って食べる気にはならなかった。シロがいなくて寂しかったから、気を許せる仲間がほしかったのかもしれない。そのうちにタヌキは、おれの横で一緒に寝るまでになっていた。でも、タヌキはめちゃくちゃ臭い。風呂に何年も入っていないおれの何倍も臭いんだ。

臭そうだなぁ。可愛いけどね。
たぬきの愛らしさってなんだろうな。よく知らないからなんだろうけど。

位置: 1,388
女を突き飛ばして、さっさと服を着て部屋から飛び出した。そしたら女が後からついてきて泣いているんだ。あやまっていた。従業員の男の人が出てきて、何かあったのかと聞くから、人の体を滑り台みたいにするわ、椅子の間から手が伸びて来るわで頭に来たんだと説明したら、従業員が「いやぁ、それは、お客さん……」と苦笑いして困っていた。
連れてきてくれた人を呼んでもらって事情を話したら、「もうおまえは連れてかない」って怒られちまった。無理やり連れてこられておっかない目に遭って怒られたんじゃ、割に合わねえ。

性欲とかはおじさんになかったのだろうか。しかしコメディだ。

位置: 2,260
おれはさ、寒さ、暑さは慣れているし、腹が減るのは我慢ができる。だけども寂しさだけはいつまでもまとわりついてくることを身をもって知っている。だからシロが死んだときの寂しさ、そしてひとりぼっちになってしまう寂しさはもう二度と味わいたくない……。それが正直な気持ちだった。

寂しさは辛いよね。腹が減るのもつらい。でも、やっぱり寂しいのは辛いよ。本当に。

位置: 2,403
理学療法士という肩書を持っていて、体のことをよく知っている職業だという。歩行訓練が始まると、おれがうまく歩けなくても、優しい言葉で励ましてくれる。ときには褒めてくれる。人間、相手をけなすことは簡単だけど、褒めることは難しいもんだ。気持ちよくなるからまさに褒め上手だと思った。相手を褒める人はすごいと思う。

誰かを褒めて生きていきたいね。
お互いにいい気持ちになれるからね。

The following two tabs change content below.
都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする