『天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ(上)』感想 なかなかファンタジーなSFでござる

文章に想像力がついていけないときがあって、老化かなと思ってしまいますね。

西暦2803年、植民星メニー・メニー・シープは入植300周年を迎えようとしていた。しかし臨時総督のユレイン三世は、地中深くに眠る植民船シェパード号の発電炉不調を理由に、植民地全域に配電制限などの弾圧を加えつつあった。そんな状況下、セナーセー市の医師カドムは、《海の一統》のアクリラから緊急の要請を受ける。街に謎の疫病が蔓延しているというのだが……小川一水が満を持して放つ全10巻の新シリーズ開幕篇。

現代和製SFの代表作との話をどこかで聞いて。
しかし、これが全部で10巻つづくかと思うと、ちょっとこころが折れてしまいそうになりました。
上下巻まで読んだので、とりあえず一旦置きます。置いたら最後、すぐ忘れちゃうことは明白なんだけどね。

位置: 305
コイルガンは彼ら《 海の一統》を象徴する武器だ。彼らは、はるか昔に自らの肉体を改造した人々の末裔である。体内に多量の電気を溜め、その電気で二酸化炭素を分解するので酸素呼吸を必要としない。先日アクリラが言ったように、溺れることのない人々なのだ。

SFとファンタジーの間の存在。
ラノベとかとの相性も良さそう。

910
あわや植民計画全体が崩壊するかと思われたが、一人の無名の女性が頭角を現して、あい争っていた二万人の移民たちを和解させ、再建の道筋を示した。  それがサンドラ・クロッソだった。後に《 建国 の 女》の敬称を 奉られる、カリスマ的な政治家である。やがて彼女のもとに、同僚である政治家のハン、宇宙士官のアウレーリア、建築家のラゴス、医師のセアキ、それに謎めいた 偽薬売り といった人々が集まって、初期の自治政府を樹立した。

アヴェンジャーズ感ある。これが一人ひとりちゃんと背景がありそうなんだな。

位置: 2,139
だが、伯父の意見が独りよがりにすぎないことは、少し町を歩いてみればすぐわかった。議員には物陰や窓の奥から暗いまなざしが注がれた。一体なぜこんな状況で自分は当選できたのだろうとエランカは疑問に思い始めたが、それと意識して調べればすぐにわかった。
植民地の選挙には、委任制度や代理人投票制度、権利交換制度など数々の複雑で回りくどい仕組みが用意されており、有権者の意思をまともに反映しなくなっていたのだ。そういえばエランカ自身、若いころに十数枚もの書類を書いて複数の役所に出かけ、ようやく投票を果たしたことがあった。あのころは全住民が同じことをしているものだと当然思っていたが、そんなわけはなかった。多くの市民は丸を一つ書くだけの簡単な用紙を役所に預けており、選挙のときにはそれが白紙委任書として使われるのだった。

昔の黒人選挙がそうだったって聞きますね。投票するための用紙を何枚も一文字もミスなく提出してようやく認められる、的な。

位置: 2,725
だが、目を閉じると鮮烈なイメージがよみがえった。
肩に触れた強い指、ムスクに似た匂い、脊髄に直接響くような低く穏やかな声と、あくまでも 慇懃 な態度。それらはきわめて印象的だったし、今こうして思いかえすだけでも鼓動が高鳴った。 そう、 彼は心地よかった。エランカは冷静でいようと努めながら、そう認めた。

エランカかわいい。

位置: 2,731
ベンクトとオーロラのことを思いだすと、不快感がいや増した。その不快感はまず第一に、子供に春を 鬻がせるということ、それを買う客がいるということに対してだったが、一段深く考えを進めると、彼ら自身が自分の境遇を受けいれているということがさらに不快だった。さだめだって。なぜそんな風に受けいれているのか。なぜそんなことが首都のど真ん中で、ああも巨大に許容されているのか。
アンドロイドだから。

アンドロイド人権問題。別名イヴの時間問題?とにかく要素てんこ盛り!

位置: 3,556
「戻りません! これは明らかに臨時総督閣下の命令範囲を逸脱しています! 破壊や占領は命じられていないでしょう。どこまでやるつもりなの?」
「彼の真意を汲んだまでよ」
ザリーチェは答えて左右の兵に目配せした。二人の兵士がエランカの両腕を取ろうとする。だが、エランカはそれを振り払ってザリーチェの前に回った。 「娼婦かどうか、機械かどうかは問題じゃない。必要なのは徳と感性よ。あなたたちにはどちらもない!」

ザリーチェもいいのよね。色っぽくて。アニメ化してくれないかな。

シェアする

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

フォローする