大好きな森見作品ですが、あまりにマジックレアリスムが強いと苦手です。
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座敷の奥には鴨川が流れていて、そこを抜けた先には巨大な京都タワーがあったと思ったらそのてっぺんに木屋町がある、みたいな魔法のような奇想天外な展開が延々と続かれちゃうと、読んでいるこっちの想像力が枯渇しちゃうんですな。
森見ファンをやるというのは想像力が要るのです。
ファン垂涎の裏設定
森見作品のファンをやっていてたまらないな、と思うのは、彼の作品の登場人物がいろんな作品に顔を出すことですな。
今回も、「大日本沈没党」というしょうもない団体が出てくるんですが、これは下鴨幽水荘で結成されたとのこと(四畳半神話大系)。重要な登場人物である恩田先輩の大学研究室の教授は淀川教授であるということ(有頂天家族)、その有頂天家族に出てきた金曜倶楽部(これもアガサ・クリスティーのパロディーですが)の上位組織であるところの土曜倶楽部、その傘下にあるのがテングブラン流通機構、このテングブランというのは有頂天家族でいうところの偽電気ブランである、などなど。
この変は単なる偏愛でしかないのですが、狭い世界でしかわからないことがつながっていくシナプスの快感というのは確かにあるんです。
愛すべきぽんぽこ仮面
写真は京都巡礼の時にとった八兵衛明神です。
優秀すぎるがゆえに「並み居る俗物ども」に敗北を喫して、東京から京都へやってきたときも、そのアヤフヤ感は続いていた。仕事は仕事で片付いていくけれども、それはそれであって、自分とはまるで関係のないことだと感じられる。そんな日々の営みの先に、自分が漠然と思い描いていた栄光はない。かつては分かちがたく結びついていたはずのものが、いつの間にかほどけていて、結び直す方法が分からず、溝は深まる一方なのだ。そうして手をこまねいている間にも、自分の中にある根っこ、一番大事なものが窒息しかかっていて、手遅れになる時が刻一刻と迫ってくるような焦燥感が募る。頭をからっぽにして『聊斎志異』を読み、夜の街を彷徨し、若手たちを同じ悩みに導こうとしてタネを播き、でたらめなホラ話で煙に巻いても、その気持ち悪さは寝ても覚めてもつきまとう。
この後藤所長の独白。いい味ですねぇ。ほんとにいい。
この味が忘れられなくて森見作品を読み続けているといっても過言ではないのです。
続編あり?!
先日発売した、『有頂天家族二代目』。あれも三部作の二作目だそうですが、この『聖なる怠け者』もシリーズになるんでしょうかね。本作の終わり方が明らかなto be continued感だったんでね。
作品としては好きですが、あまり人には勧められないかも。
森見ファンでないと理解できないことが多すぎて。彼の作品もすでに宵山の迷路の中に入りつつあると考えてよろしいでしょうか。
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