『ひとり飲み飯 肴かな』 料理に歩み寄る姿勢

久住さんのグルメ作品に通底するテーマとして、欠かせないのは「料理に歩み寄る姿勢」だと思います。ここが他のグルメ作品と大きく違うところ。それが評価されて、いまの人気があるのでは?

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ベストセラー『孤独のグルメ』『花のズボラ飯』『食の軍師』の原作、共作で食漫画に新風を吹き込む久住昌之氏が、ひとり酒とその肴となる飯の機微を、ときにファンキーに、ときにリリカルに綴った愉しいイラスト&エッセイ集。第1部「孤独の飲み飯」、第2部「今夜もひとり居酒屋で」、文庫化にあたって新たに収録される第3部「これ喰ってシメ!」に加え、巻中付録として実弟のイラストレーター&絵本作家・久住卓也氏との兄弟ユニットQ.B.B.による「幼稚な大人」マンガを掲載。「食の陣立て」にこだわる著者の面目躍如たるバラエティー溢れる一冊です。飲むほどに、食べるほどに、ひとりでもヨイここち!QUSUMIワールド全開の、楽しいイラストエッセイ集です。だらしない(?)酒好きならわかる、「あー、楽しくなってきちゃった」気分を存分に味わえる、そんな一冊です。

あたくしも薀蓄とか大好きな人間で、ともすればそういうのに固執し教養のない人間を蔑むようなグルメ作品を好んでしまう傾向があったので、久住グルメを読んだときはハッと我に返るような感覚がありました。
悪いのは池波正太郎先生かしら。どうもグルメに教養を持ち込むきらいが、日本の文化にあるような気がしてならぬですな。

どうして今の客ってのは、出された料理をやれ味が薄いだの、味が落ちただの、どこのほうがウマいだの、原料はなんだの、インテリみたいな口を利くんだ。  出てきたものを、美味しくなるように考えたらいいじゃないか。どうしてこっちから美味しく食べようと歩み寄らないんだ。食べるっていうのは、君自身の問題だろう。どうして他人ごとのようにそうやすやすと評論できるんだ?
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これですよ、これ。この精神。
『美味しんぼ』の弊害です。すいません、料理や料理人に失礼をしていた。

本当は酒を飲む前に、軽く食べておくのが、からだのためにはいいらしい。  でも食べちゃうと、そのあとの酒のひと口目のうまさが、ボヤけるんだな。
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でも、違うところは違う、とはっきり言いたい。
飯を食ってから飲む、食いながら飲む。大いに歓迎。「飯を食うと酒が美味くなくなる」は嘘ですよ。志ん朝師匠ふうに言うなら「何かないと寂しい」ってやつ。

まず、おいしいとうふを一丁用意して、あとは昆布と、ネギと、鰹節、醬油。以上。  もう俺はここまできてるね。湯どうふのシンプルさが。ここまで洗練されてますよ。  白菜だ春菊だ、いらない。  シイタケだ、エノキだ、全然いらんね。  梅の花に切ったニンジン? 馬鹿か、どシロウトが。お子様ランチでも食ってろ。  タラ? お前持って帰って食っていいよ(お前って誰だ)。
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湯豆腐ね、ソリッドだね。
削ぎ落としてますよ、これぞ日本料理。引き算の美学。小さん師匠だね。

ボクの好きなのはツナのトーストサンド。ツナ缶を容器にあけ、タマネギをみじん切りにしたのを加え、黒胡椒と塩を軽く振って、マヨネーズで和えて、準備完了。
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厚めの食パンを二枚、こんがりと焼いて、片面にバターを塗る。  一枚にツナをぼってりと敷き詰め、バターの方を裏返してのせる。上からちょっと押す。そして食べやすいように包丁で十文字に四つに切る。横に三つに切ることもある。皿に盛る。この時、ピクルスを添えると、グレードがグンと上がる。気がする。
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これ読んでから、うちの朝は毎日、中に何か挟んだトースト。もうね、余ったら夜の肴にもなるしね。最強。

風呂上がり直後の生ビールは、イメージほど美味しくない。「風呂から上がって、キンキンに冷えた生ビール!」って言うほど美味しくはない。刺激があるだけ。若者ってのはなんでも刺激が好きなんです。五十倍の激辛カレーを汗みどろになって食べるのと同じ。それ、美味しくはないだろ。刺激、スリル、冒険。味は二の次。馬鹿だ。中学生が給食の牛乳をどっちが早く飲めるか競争してるのと、あんまり変わらない。そういうのを作る方も作る方だ。  歳をとると、刺激より、味わい重視になる。そうすると、刺激を取り除いた真実が見える。
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これ、分かっちゃうんですね。
イメージ的には湯上がりにビールって最高なんだけどね。ちょっと違う。
汗が引いたくらいに飲むのが最高、って、そうかもしれない。
セント酒に毒されているかな。でもそう。昨日湯上がりに午後の紅茶ミルク飲んだら抜群に美味かった。そういうことかしら。

日本人は、食欲がド助平だ。食うことに淫乱だ。テレビをつけても雑誌をめくっても、食欲刺激ものだらけだ。「おいしい!」というのは性欲にたとえればよがり声だ。テレビをつけるとよがりまくってる。
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ど助平な国民性。良いじゃないですか。健康で。意識的にやっている分には、ね。

久住さんのドラマが次々と当たっているの、なんとなくわかったような気がします。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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