『ぐるぐる問答』は漫画家さんとの対談も面白い

羽海野チカさんとの対談も面白かった。

p193
羽海野 『3月のライオン』は「自分はこれでいいのか な」とぐるぐる自問自答をくり返す男の子を描こうと。『ハチクロ』が「社会に出る まで」のぐるぐるであるなら、「社会に出てしまったあと」のぐるぐるを描きたかっ た。十五歳でもう「社会」に押し出されてしまった男の子がそのために「置き去りに してきてしまったもの」と向き合う話を。ただ、もともと女のお客さんが多いので、 一巻から将棋をがっつり描いちゃうと「難しくてムリ~」ってなっちゃうかなって。

将棋をさすのも嫌いじゃないあたくし。3月のライオンも楽しく読ませていただいています。そして、何より置き去りにしてきたものの多い人生でした。15歳どころか20半ばまでダラダラして社会に出なかったあたくしですが。

p201
持って生まれたものが違うって不公平ですよね。でも不公平だって嘆いていても しょうがないってことをたぶん私は描きたいんだと思う。だって一回も負けたことが ない人なんていないから。『3月のライオン』では負けた時の身の振り方を自分の知 ってる範囲でなるべくいっぱい描いてみようと思ってるんです。

確かに挫折や不公平感は彼女の作品に滲み出ている気がします。だからこそ男性ファンも多いのかも。将棋×挫折=おじさん大好きですもんね。どうして羽海野チカさんが書いているのかが不思議なくらい。

また、萩尾望都さんとの対談も良かった。

p221
森見 父が描いた理想の生き方からは外れたわけですが、父親とは「裏切られる存在」なのだと最近は考えています。
萩尾 裏切られる、というと?
森見 例えば、僕が父の願う通りの生き方をしたら、単なる「父親の縮小再生産」で しかない。父は自分の理想を息子に裏切られることで初めて父親になれる、そんな切 ない存在なのかなと。僕が「裏切る」度に、父は寂しそうに見えました。

森見さんの父親像に関する話。はじめてききました。森見さんの作品で家族といえば「有頂天家族」ですね。あの偉大な下鴨総一郎は息子たちに裏切られたんでしょうか。そんな気はしませんが。

矢二郎にすら「裏切られた」とすら思っていないんじゃないかしら。そんな偉大な父になりたい。無理かな。背伸びは良くない。

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