そして中巻。憎き綿谷ノボルが登場しますな。
p64
君たちが結婚してから六年経った。そのあいだに、君は一体何をした? なにもしていない—そうだろう。君がこの六年の間にやったことといえば、務めていた会社をやめたことと、クミコの人生を余計に面倒なものにしたことだけだ。今の君には仕事もなく、これから何をしたいというような計画もない。はっきり言ってしまえば、君の頭の中にあるのは、ほとんどゴミや石ころみたいなものなんだよ。
こんなこと面と向かって言われたら死なせてしまうかもしれません。ひどいことをいう。絶対悪として描きたかったのかしら。とにかく言い過ぎる。こういう「相手を打ち負かす」能力にやたら長けている人っているけどね。
p111
しばらくのあいだ半月が続くでしょう、と加納マルタは言った。彼女は電話でそう予言したのだ。
この井戸を下っていくときの描写、いいよね。確かに縄梯子って安定しなくて、難しいんですな。登るのは簡単ではない。下るのも。
p232
私は結婚前も、結婚してからも、悪いとは想うのだけれど、あなたとの間に本物の性的な快感を持つことが出来ませんでした。
これ妻から言われたくないセリフ、トップ3に入るんじゃないかしら。これはきつい。言われたら立ち直れないかもしれない。
p232
あなたに抱かれることは素敵だった けれど、でも私がそのときに感じるのはすごく漠然とした、まるで他人ごとのように さえ思える遠い感覚だけでした。それはあなたのせいではまったくありません。私が うまく感じることができなかったのは、純粋に私の側の責任です。私の中につっかえ のようなものがあって、それが私の性感をいつも入口で押し止めていたのです。でも その男の人との交わりによって、どういう理由でかはわからないけれど、そのつっかえが突然取れてしまうと、私には自分がいったいこれからどうすればいいのかわから なくなってしまったのです。
いや、これきついよ。
読んでて、気持ち悪くなる。「そんなこと言わないで」と泣きたくなる。村上春樹もここは書いていて辛かったんじゃないかな。楽しかったかな。作家としては楽しいだろうな。
下巻に続く。
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