『ノラや』 百閒先生、デレすぎ

久々に読んだんですが、やっぱりおじさん可愛い。

p47
野良猫を野良猫のまま飼うとしても、飼う以上名前があった方がいい。野良猫だからノラと云う名前にした。但しイプセンのノラは女であったが、彼は雄である。性が 逆になったりした名前はおかしいかも知れないけれど、時勢が変れば人間だって男だか女だか判然しなくなり、入れ代ったりしないとは限らないから男のノラで構わぬ事にする。

こういう理屈屋なところ、好きなんだよなー、百閒先生。
また、今の時代も、百閒先生からみたらずいぶん性が分かりづらくなったろうな。いいことだ。

p51
猫は七代祟ると云う。ノラをいじめるつもりはないから、尻尾でぶら下げたのちいじめたのではないから、祟られる心配はないが、怨みの側ではそれ程執拗である癖に、恩の方は丸で関知しないと云うのが古来、猫の通り相場である。野良猫のノラも拾い上げられたと云うので感謝感激している風はない。三日の恩を忘れない犬よりも、猫 のそのそっけない所がこちらにはいいので、恩を知られたりしては却って恐縮する。 恩のやり取り、取り引きは人間社会で間に合っているからノラには御放念を乞う。

動物も人間も、別け隔てなく屁理屈をもって接する。この百閒先生のスタンスが好ましいのよね。ファンが多いのもわかる。

p70
ノラが昨日の午過ぎから帰らない。一晩戻らなかった事はあるが、翌朝は帰って来 た。 今日は午後になって帰らない。ノラの事が非常に気に掛かり、もう帰らぬので はないかと思って、可哀想で一日じゅう涙止まらず。やりかけた仕事の事も気に掛 るが、丸で手につかない。その方へ気を向ける事が出来ない。それよりこんなに泣 いては身体にさわると思う。

これが永遠の不在になるわけだ。ただ、すでに二日目から号泣の百閒先生。これがずーっと続くんだからね。情が深いにもほどがある。おじさん可愛い。

p80
一献している間も何だか引き寄せられる様に又風呂場へ行きたくなり、行けば又泣き出す。ノラが帰らなくなってからもう十日余り経つ。

めそめそおじさん。百閒先生、本当によく泣く。泣き虫。

p81
風呂蓋の上にノラが寝ていた座布団と掛け布団用の風呂敷がその儘ある。その上に額を押しつけ、いないノラを呼ん ノラやノラやノラやと云って止められない。もうよそうと思ってち又そう云いたく り、額を座布団につけて又ノラやノラやと云う。止めなければいけないと思っても、 いないノラが可愛くて止められない。「見っともないから泣き顔を隠したいと思うけれど、隠し切れぬで又二人の前に戻る

女々しいったらないんだ。本当に。これがずーっと続く。クルが住み始めてからも、またノラのことを考える。典型的な別名保存おじさん。いいよね。おじさん。偏屈でもあり、可愛らしくもある。

続く。

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都内在住のおじさん。 3児の父。 座右の銘は『運も実力のウンチ』

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