もはや最適解は出ているのか。
――ぼくを満たしてくれるものは、あのあつい肌と肌とのふれあい――。妖しい魅力を纏った少年、ジルベール・コクトーは抱かれることでしか心満たされず、威厳あるラコンブラード学院においても退廃的な生活を送っていた。あるのは、孤独だけ……そんな中、学院に1人の転入生がやってくる。セルジュ・バトゥール――貴族の父とジプシーの母の血を引き、黒髪ととび色の肌をした転入生。眩いばかりの純粋さで周囲を魅了する一方で、彼もまた埋めがたい孤独を抱えていた。共に孤独を抱えながら、対照的な2人は、傷つけ傷つきながらも交差する。19世紀南仏を舞台に開花する青春と愛を描いた、傑作ロマン第1巻!
嫉妬、欺瞞、あてつけ……ありとあらゆる負の感情をこれでもかと駆使して気づかれた少年愛の傑作でした。とにかく理想主義的。耽美。
これだけ酔わせられるというのはまさに才能でしょう。読書中の没入感が半端じゃない。
しかし、本当に耽美だ。ただ美しい。そして、そのためにはあらゆる倫理を無価値としても許される傲慢さがある。しかしその傲慢さがまた、美しい。
甘え方もまた、絶妙なんだ。ジルベール、本当に名前から容姿から性格から、すべて計算され尽くしている。恐ろしいキャラクターだ。そして、その消え方までも。
このひげのおじさんもまた、恐ろしい人ですよ。しかし読者の投影でもある。
ジルベールには放っておけない何かが、たしかにある。
そして「美しいもの=愛でるもの、それをイコール出来ないようなやつは 非芸術的でおくびょうもの」ってのは、なるほど、このジャンルに通底する価値観かもしれない。
これはいいシーン。確かに、自分が子どもたちに伝えられることといえば、自分の試行錯誤の記録かもしれない。自意識は警鐘をならすが。
死にそうになっても美しい。いや、これは、まさに。
小悪魔なのか、もはや天使なのか。
少年愛というジャンルの傑作。いや、しかし、これは耽美だ。カロリーがすごい。
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