主人公の美少年感がすごい。
位置: 679
そして、私のまわり気かもしれぬけれど、年長の友だちはほとんどすべて、深山木幸吉とても例外ではなく、多かれ少なかれ、私の容貌に一種の興味を持っているように思われた。たとえいやな意味ではなくとも、何かしら私の身内に彼らを引きつける力があるらしくみえた。そうでなくて、あのようにそれぞれ一方の才能に恵まれた年長者たちが、青二才の私などにかまってくれるはずはなかったからだ。
どこにも少年とはかかれていないんですが、ここまで人を引きつけるんだとするともはやショタとしか説明できません。それくらいすごい。
位置: 965
「この手紙にある例の品物というのは、あなたにはわかっているのですか。一体なんなのです」
「わかっているよ、わかっているから怖いのだよ」
「それを先方の申し出どおり送ってやるわけにはいかぬのですか」
「おれはね、それを敵に送り返すかわりに」彼はあたりを見廻すようにして、極度に声を低め「君に宛てて書留小包で送ったよ。
この深山木という探偵、非常に優秀な感じなのに、あっけなく殺されます。しかし、この「死ぬ間際に小包を送っておく」って展開、好きだな。
位置: 1,579
「この子は芸名を 友之助 っていうのですよ。年は十二だそうだけれど、発育不良で小柄だから十くらいにしか見えない。それに義務教育も受けていないのです。言葉も幼稚だし、字も知らない。ただ芸が非常にうまくて、動作がリスのように敏捷なほかは、智恵のにぶい一種の低能児ですね。しかし動作や言葉に妙に秘密的なところがある。常識はひどく足りないが、そのかわりには、悪事にかけては普通人の及ばぬ畸形な感覚を持っているのかもしれない。いわゆる先天的犯罪者型に属する子供かもしれないのです。
サイコパスで発育不良。もはや乱歩の大好きなやつです。
どうしてこう、バランスを欠いた人物を配置したくなるのか。そこが乱歩ぽさといえばそれなんですがね。
位置: 1,754
諸戸は私に対して不思議な恋愛を感じていたし、私の方では、むろんその気持をほんとうには理解できなかったけれど、頭だけではわかっていた。そして、それが、普通の場合のようにひどくいやな感じではなかった。彼と相対していると彼か私かどちらかが異性ででもあるような、一種甘ったるい匂いを感じた。ひょっとすると、その匂いが、私たち二人の探偵事務を一層愉快にしたのかもしれないのである。
まんざらでもない美少年。
たまりませんね。そこに入っていく勇気はないよ。耽美。まさに耽美。
位置: 1,852
系図帳の秘密が、もし諸戸の想像した通りだとすれば、むしろ景気のよい華やかなものであったのに反して、雑記帳のほうはまことに不思議で、陰気で、薄気味のわるい代物であった。われわれの想像を絶した、人外境の便りであった。
人外境というパワーワード。
今書いたら色々問題になるんだろうなぁ。
位置: 2,313
一座の道化役に、一人の 小人 がいた。三十歳のくせに七、八歳の少年の背たけで、顔ばかりがほんとうの年よりもふけて見えるような、無気味な片輪者で、そんな男にありがちの低能者であった。
これなんか、なかなかポリティカル・コレクトネスに反するでしょうね。
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